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宗教と子ども

親の信仰の影響を受けて育った多くの「宗教2世」たちが声を上げ始めています。

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「絶対に信仰を否定しない」2世に寄り添う旧統一教会元信者の牧師

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旧統一教会元信者で、現在は牧師の竹迫之さん=仙台市青葉区で2022年11月29日午後5時55分、太田敦子撮影
旧統一教会元信者で、現在は牧師の竹迫之さん=仙台市青葉区で2022年11月29日午後5時55分、太田敦子撮影

 「統一教会が間違いだとは決して言わない」。旧統一教会の元信者で、今は2世信者らの支援に奔走する牧師、竹迫之(たけさこ・いたる)さん(55)は意外な言葉を口にした。合同結婚式で出会った両親のもとに生まれた2世にとって、教義の否定は「アイデンティティークライシス」(自己喪失)につながりかねないという。この20年あまり、2世たちに寄り添ってきた竹迫さんが見た現実は過酷なものだった。

集金手段として乱用された合同結婚式

 竹迫さんは福島県にある日本キリスト教団白河教会で牧師を務める。1980年代後半に旧統一教会の信者だった過去をホームページで公表しており、多くの2世から相談を受けてきた。最近も、親が学費に充てるはずの貯金を献金してしまい、退学を迫られた学生や、花嫁修業を強制され、就職活動を妨害された学生から連絡があった。

 実態が明るみに出た2世問題について「空白の30年の一つのツケの形。結婚させ放題だったわけですから」と厳しく言い放つ。

 教団の「霊感商法」はかつて社会問題となった。著名な芸能人の合同結婚式があった92年ごろまでワイドショーをにぎわせたが、次第に批判的な報道は下火となった。90年代に日本人が合同結婚式に参加する場合、1人あたり140万円程度の献金が必要だった。教団は手軽な集金手段として乱用し、何万組ものカップルが誕生したという。

「神の子」の苦悩

 そこで結ばれた夫婦のもとに生まれた子どもは教義上、罪のない「神の子」とされる。「神の子が増えれば増えるほど世界は平和に近づくという理屈で、子だくさんになる傾向がある」。だが、実際には養育費と献金がかさみ、困窮する家庭が多いのだという。

 2世が自分の環境に違和感を抱くのは、スマートフォンを持ち始める高校入学前後。インターネットには「サタン」の情報があふれているから見てはダメと言われているが、「子どもは純粋に統一教会は素晴らしいと信じ、どんなに世界に貢献しているのか検索する」。すると理想とは正反対。たくさんの被害者がいて、罵詈(ばり)雑言が並んでいることにショックを受ける。

 日常生活では恋愛はもちろん、恋愛を扱ったドラマやアニメ、異性の気を引くものとして化粧やアクセサリーも禁止される。さらに、韓国にある教団関連の大学への進学を勧められることが多い。次第に「この団体はおかしいのでは」と疑念が強まるのだという。

 「それでも経済的に親に依存しており、親が信じているものを裏切ることはできないと思う心根の優しい子が多いのです」

 旧統一教会元信者の牧師、竹迫之さんに迫った記事は全3回。以下のラインアップでお届けします。
 上 絶対に信仰を否定しない
 中 脱会後も26年続いた恐怖
 下 カルトと宗教の違いは

信仰を否定しないわけとは

 2世の悩みを受け止める際、絶対に「統一教会は間違っている」と言わないことにしている。「本人は統一教会があって合同結婚があって…

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