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安倍元首相に諫言を続けた招待番号「60」の財界人

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記者会見の冒頭で加計学園問題などをめぐって国民から不信を招いたことを陳謝する安倍晋三首相=首相官邸で2017年8月3日午後6時1分、手塚耕一郎撮影
記者会見の冒頭で加計学園問題などをめぐって国民から不信を招いたことを陳謝する安倍晋三首相=首相官邸で2017年8月3日午後6時1分、手塚耕一郎撮影

 年の瀬に1年を振り返ると、最も衝撃だったのは安倍晋三元首相の銃撃事件でした。時には励まし、時には諫言(かんげん)もいとわず、安倍氏に助言を続けてきた財界人の逸話を紹介します。【論説室・野口武則】

 森友・加計学園問題で野党から追及を受けていた2017年、ある財界人が安倍氏の携帯電話にショートメールを送った。安倍氏が疑惑を認めようとせず苦しい答弁を続けていた時期だ。

 「あなたは論語の勉強が足りない。『吾(われ)十有五にして学に志す。 三十にして立つ。 四十にして惑わず。 五十にして天命を知る。 六十にして耳順(したが)う』。あなたは60歳を超えたけれど、耳に逆らっていてはだめです」

 安倍氏は同年7月23日の対談イベントで「国民が今の状況にどういう考えを持っているかに、耳を傾けていかなければならない」と語った。そして論語のこの一節を引用し、「私はあまり人の話を聞かないイメージがあるけど、結構人の話を聞くんです」と会場の笑いを誘った。

 財界人は別のメールも送った。三国志の英雄・諸葛亮が、先帝・劉備の遺子である劉禅に書いた「出師(すいし)の表」の一節だ。

 「『先帝、臣(しん)の謹慎なるを知る。故(ゆえ)に崩(ほう)ずるに臨み、臣に寄するに大事を以(もっ)てす』。謹慎の2字を忘れてはいけません」

 謙虚に慎むことの大切さを説くこの部分が、出師の表の核心なのだという。

 安倍氏は同年8月3日、内閣改造の記者会見の冒頭で「さまざまな問題が指摘され、国民の大きな不信を招いた。改めて深く反省し、国民におわび申し上げたい」と述べ、長々と頭を下げた。

 19年秋に首相主催の「桜を見る会」が問題になった際、財界人は私に、安倍氏との親密さをこう話していた。

 「送られて来た招待状に『60番』と書いてあった。安倍さんが推薦してくれたのでしょう」

 「60」とは、マルチ商法で行政処分を受けた「ジャパンライフ」元会長の招待状に記されていた区分番号だ。安倍氏は明確に認めていなかったが、「首相枠」ではないかと野党が追及していた。

 メールの送り主は、…

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