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「多島美」という言葉を知ったのは、陀峯山(だぼうざん)だった。広島県江田島市能美島にある標高438メートルの山。登り始めから下山するまでずっと、瀬戸内海を見渡すことができる。
瀬戸内海には、小島がたくさん浮かんでいる。浮かぶというと揺れ動くようなニュアンスがあるが、小さな島々は、ある日はくっきりと見えるけれど、ある日はかすんで、4日間広島に滞在するうちに、その眺めは日々変わり、まさに「浮かぶ」という言葉がふさわしかった。内海特有の穏やかな紺碧(こんぺき)の水面に、青々と緑が茂った小島がいくつもいくつも浮かんでいた。
今回の滞在では、江田島に2泊することになり、その折に山を登ろうと考えた。当初はどんな案内にもいちばんに出てくる山を考えていた。しかし、地元の岳人である吉村千春さんが「陀峯山にしましょう」と提案してくださり、迷うことなく行き先を変更した。長年、広島で登り続け力を蓄え、海外の高峰を幾つも初登頂した吉村さんが言うのだから、間違いない。
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