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ゴリラの鼻歌が消えた 保護地ルワンダ、写真家が気づいた異変

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マウンテンゴリラの一家©森啓子/ルワンダ開発庁
マウンテンゴリラの一家©森啓子/ルワンダ開発庁

 東アフリカにすむ絶滅危惧種のマウンテンゴリラ。保護政策によって近年、個体数が増え、貴重な保護の成功例として知られる。一方、生息地のルワンダで長年、マウンテンゴリラを撮り続けてきた写真家の森啓子さんは、ある異変に気づいた。「ゴリラが鼻歌を歌わなくなった」――。

 森さんは、ゴリラの魅力を「目で見て語り合えること」と語る。

 テレビのドキュメンタリー番組の制作会社に勤めていた森さんは、1998年に仕事でコンゴ民主共和国を訪れ、ヒガシローランドゴリラを撮影した。視線を合わせることを威嚇と捉えるサルなどと異なり、ゴリラは相手の感情を読み取るために目を見る。ある時、森の中で突然、背中の毛が白くなったオスと遭遇した。背中が白いのは群れのリーダーとなる立派な成獣にみられる特徴で「シルバーバック」と呼ばれる。目を見つめて「私は敵じゃないよ」と心の中で呼びかけると、シルバーバックは「ウーン」とうなり、その場で草を食べ始めた。「わかったよ」の合図だった。「心が通じたような気がしました」

 2008年にルワンダで初めてマウンテンゴリラに出合い、改めてゴリラの魅力にひかれた。退社してフリーの写真家となり、11年に単身ルワンダに渡り、1年の大半を同国で過ごすようになった。ゴリラが生息する同国北部の山岳地帯の森「ボルカノ(火山)国立公園」に現地の「カリソケ研究所」のスタッフとともに入り、撮影に没頭した。特に森さんの心を打った仕草が「鼻歌」だ。雨の後、森に日の光が差し込み始めると、ゴリラたちは木の陰から出てきて草を食べ始める。そんな時に、人間の鼻歌そっくりな音を出すのだ。大人のゴリラは低い声で「フーフーン」。子どもは高い声で「フッフーン♪」。その声が聞けるのはいつも、ゴリラがごきげんな時だった。「幸せな時に歌うのね」と理解していた。

 しかし数年前、撮影した写真や映像の素材を見返していて、ふと気づいた。「ゴリラが歌わなくなっている……」。最後に鼻歌を歌うゴリラを撮影したのは13年ごろ。それ以降の映像をいくら見返しても、鼻歌は収録されていなかった。

   ◇

 近年、森さんや現地の研究者の間で、ゴリラの生育環境のある変化…

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