トランプ氏に刑事訴追勧告 決定的な新証拠なく、司法当局難しい判断

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トランプ前大統領の訴追を勧告する方針を決めた米下院特別委員会=ワシントンで2022年12月19日、AP
トランプ前大統領の訴追を勧告する方針を決めた米下院特別委員会=ワシントンで2022年12月19日、AP

 2021年1月の米連邦議会襲撃事件を調査する下院特別委員会は19日、トランプ前大統領(共和党)の刑事訴追勧告という前例のない結論を出し、約1年半の調査を終えた。事件の全体像が浮かび上がり、トランプ氏の政治的・道義的責任は明確にされたが、刑事責任につながるような決定的な新証拠は出なかった。勧告を受けた司法当局は、前大統領の訴追に踏み切るかどうか難しい判断を迫られることになる。【ワシントン秋山信一】

 「我々の司法制度は、雑兵だけが刑務所に行き、黒幕や首謀者に自由を許すような制度ではない」。民主党のラスキン下院議員は19日の委員会で、トランプ氏を「黒幕」、襲撃の実行犯を「雑兵」に例え、トランプ氏の刑事訴追の必要性を強調した。

 最終回となった19日の委員会は、20年の大統領選を「不正選挙」とする虚偽の主張、ペンス副大統領(当時)らへの圧力、「暴徒」の招集、襲撃事件発生後の黙認など、主要な論点の調査結果を各委員が数分間ずつ説明する形で進んだ。選挙結果を覆そうとしたトランプ氏の言動が前代未聞の襲撃事件につながった経緯が改めて示されたが、大半の内容は6~7月の公聴会と重複し、最後に刑事訴追の勧告を決議した以外は見せ場がなかった。

 新事実の解明が進まなかった背景には、共和党の非協力的な姿勢がある。事件直後には、共和党も01年の同時多発テロの調査をモデルにした超党派の独立調査委員会設置に前向きだった。しかし、党内でトランプ氏の影響力がさほど衰えない中、責任追及が進めば22年11月の中間選挙に向けて不利になるとの計算が働き、共和党は独立調査委の設置に反対した。

 代わりに下院に設置された特別委でも、民主党のペロシ下院議長がトランプ派議員の委員選任を拒否。共和党からは…

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