日本版カーボンプライシング、23年度始動 本当に脱炭素の切り札?
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二酸化炭素(CO2)に値段をつけて排出企業にコスト負担を求める「カーボンプライシング(CP)」。岸田文雄政権は22日、2023年度から日本版CPを段階的に導入する方針を決めた。その仕組みは、CO2排出枠を売買する「排出量取引制度」と、エネルギー企業に対する「炭素賦課金」の2本柱。政府の掲げる50年の温室効果ガス排出「実質ゼロ」の実現に向けた“切り札”になるのだろうか。
排出削減できなければコスト負担に
市場には価格を生み出す機能がある。証券取引所では株式、全国の卸売市場では農産物や水産物などが取引され、売り手と買い手が納得できる価格が生まれる。これからはCO2もその仲間になる。
23年度に始動する排出量取引市場では、CO2排出枠が取引される。
取引に参加する企業は、毎年の排出削減目標を設定する。目標より多く削減した企業は、余った削減分(排出権)を市場で売り出す。目標を達成できなかった企業は、排出権を購入することで未達分を埋め合わせる仕組みだ。
企業は、他社にお金を払うくらいなら、自社で再生可能エネルギーの利用や省エネに投資するはず――。これが排出量取引で脱炭素化が進む理屈だ。
国内ではすでに22年9月から有志企業による排出量取引市場「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」のテスト運用が始まり、国内CO2排出量の4割を占める約600社が参加している。政府はこの「GXリーグ」を段階的に発展させていく。
23年度からは、企業が削減目標を自主的に設定し、削減実績に応じて排出権を取引する。市場への参加は自由だ。ただ、目標を自主設定すると、あえて低い目標を設定した企業がたやすく目標を達成し、排出権を得やすくなり、公平な取引が成り立たない。このため、26年度からは各社の削減目標が妥当かどうかを第三者機関が認証する制度を始める。
このほか、電力部門の脱炭素を加速させるため、33年度から政府が発電会社に毎年の排出枠を販売する「有償オークション」を導入する。欧州連合(EU)や韓国などがすでに導入している仕組みで、CO2排出の多い火力発電から、再生可能エネルギーや原発への移行を促す効果があるとされる。
バブルや暴落を防ぐには
市場にはリスクも…
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