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昨年は独走→失速 今年の都大路は? 西脇工・長嶋幸宝の矜持

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都大路に向けて練習する西脇工の長嶋幸宝選手=兵庫県西脇市で2022年12月13日午後3時、大東祐紀撮影 拡大
都大路に向けて練習する西脇工の長嶋幸宝選手=兵庫県西脇市で2022年12月13日午後3時、大東祐紀撮影

 12月25日に開催される男子第73回・女子第34回全国高校駅伝。男子・西脇工(兵庫)の長嶋幸宝(そなた)選手(3年)は前回大会、1区でスタート直後から先頭に飛び出し、ハイペースを刻んだものの、中盤過ぎに失速した。しかし、そこからまもなく、足立幸永監督(59)が思わず耳を疑うような、ある「宣言」をした。

箱根駅伝を目指さない理由

 昨年の都大路。西脇工(兵庫)で当時2年生の長嶋幸宝選手は1区(10キロ)のスタート直後に飛び出した。中盤まで集団を引っ張ったが、「西大路通に入ってから、横からの風が強く、足への疲労もあって苦しくなってしまった」。集団に吸収され、何とか粘ったものの、最後はトップと30秒差の13位でたすきをつないだ。ただ、先輩ら後続の選手が粘り、チームは7位で5年ぶりの入賞を果たした。

 激闘から一夜明け、長嶋選手が引っ張る新チームが発足した。足立幸永監督(59)と都大路について振り返っていた時、「来年も飛び出します。そして勝ち切ります」と言い放ったという。思わず耳を疑うような宣言だが、足立監督は「普通の選手なら前半に飛ばしすぎたことを反省するが、長嶋は違いました。負けん気が強く、あまのじゃくなんですね」と振り返った。ペース配分を間違えたのではなく、前半のペースを後半まで維持できなかったことを反省点に挙げたのだ。そこには、ランナーとしての矜持(きょうじ)が表れていた。

2021年の都大路で、序盤で飛び出し、1区の集団を引っ張る西脇工の長嶋幸宝選手(右)=京都市で2021年12月26日、木葉健二撮影 拡大
2021年の都大路で、序盤で飛び出し、1区の集団を引っ張る西脇工の長嶋幸宝選手(右)=京都市で2021年12月26日、木葉健二撮影

 卒業後は実業団の強豪・旭化成に進む予定だ。大学に進んで箱根駅伝を目指す選手が多い中、「大学でけがをしたら実業団に呼ばれないかもしれない。呼ばれる時に行ったほうがいい」と考えて決意した。それほど、ランナーとしての将来を強く意識する。

 夢は5000メートルや1万メートルで世界の舞台で活躍すること。「高校の段階で限界を作ってはいけない。チャレンジし続けなければいけない」との思いがあり、前回の都大路でも飛び出した。駆け引きではなく、純粋な力で勝つことができなければ、世界に羽ばたけないと考えている。

 駅伝がチームスポーツであることを踏まえても、昨年の都大路に「悔いはない」と言い切る。「後続の選手に勇気を与えるような走りをしなければならない。そういう意味では、去年は自分らしいレースができたと思う」。たすきをつないだ先輩の2区・山中達貴選手が10人抜きの快走で区間賞を獲得したが、長嶋選手は「ちょっとは僕のおかげかな」と笑う。

名前の由来はイタリア語で……

 この1年、後半に粘るための練習をこなしてきた。朝の8キロの練習では6キロまでを1キロ4分のペースでこなし、最後の2キロは3分20秒ほどにペースを上げて走ってきた。午後の10キロも同じ。最後の2キロにペースを最速に持っていき、「後半にかけてペースを上げられるように、走り込みの量も質も上げてきた」と強調する。5月に5000メートルで13分37秒46の好タイムを出した。

グラウンドの整備を行う西脇工の長嶋幸宝選手=兵庫県西脇市で2022年12月13日午後2時52分、大東祐紀撮影 拡大
グラウンドの整備を行う西脇工の長嶋幸宝選手=兵庫県西脇市で2022年12月13日午後2時52分、大東祐紀撮影

 授業が終わると、誰よりも早く着替え、グラウンド整備に向かう。藤田大智主将(3年)が「いつの間にか着替えている。めちゃくちゃ速いです」と驚くほどだ。

 下級生が気を使ってトンボを貸してほしいと頼んでも、絶対に譲らない。「野球でいう『0回』の攻撃が大事で、準備からレースが始まっている」。さらに、こう続ける。「練習が始まるまでも競争だと思っている。何でも『1番』を取りたい」

 佐久長聖(長野)の吉岡大翔選手(3年)はともに世代をけん引してきたライバルだ。吉岡選手が11月に5000メートルで高校歴代1位の13分22秒99をマークしたことを受け、長嶋選手は都大路までのノルマとして、自らに課していた1日20キロのジョギングを5キロのばし、25キロとした。自他ともに認める負けず嫌いだ。

 本番では、各校のエースが集まる1区か、多くの留学生が走る3区(8・1075キロ)を担うとみられる。「誰にも負けられない。チームに流れを持ってくる走りをしたい」。名前の「そなた」はイタリア語で「鳴り響く」という意味の「ソナーレ」に由来する。集大成のランで、勝利の鐘を鳴らしてみせる。【大東祐紀】

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