当初予算案、防衛強化「元年」を強調 財政基盤は危ういまま
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2023年度当初予算案が23日、決定した。最大の焦点だった防衛費は約6・8兆円となり、前年の1・26倍に拡大。岸田文雄首相が27年度に到達すると明言した「国内総生産(GDP)比2%」に向けた第一歩となる。しかし、防衛費に充てる建設国債を戦後初めて発行するほか、肝心の歳出改革の道筋も不透明。首相が目指す防衛力の抜本強化は、危うい財政基盤の下で歩み出すことになる。
「防衛力抜本的強化『元年』予算」――。この日の政府発表資料には、随所に「元年」の2文字が躍った。政府は今後5年間で防衛費を急増させる考えで、23年度はそのスタートの年。前年度比26・4%増の約6・8兆円と異例の伸びとなったが、GDP比ではまだ1・2%程度。2%にするには単純計算で約11兆円の予算措置が必要になる。政府は27年度時点で防衛費を約8・9兆円まで増やし、これに、海上保安庁の予算や一部の研究開発・公共インフラ整備の予算を上乗せさせて11兆円を目指すことにしている。
なぜいま、防衛予算の増額なのか。
背景にはウクライナ情勢の緊迫化や将来の台湾有事への懸念の高まりがある。岸田首相は5月、バイデン米大統領との会談後に「防衛費の相当な増額を確保する」と表明。防衛費の水準を北大西洋条約機構(NATO)が定めた共通目標である「GDP比2%」にすることを見据え、11月28日に「現在のGDPの2%」に達する予算措置を講ずるよう指示した。しかし、増額を賄うには5年間で約17兆円の財源を捻出しなければならない。まず規模ありきの議論には財務省からも警戒の声が上がった。
政府は法人税、所得税、たばこ税の3税の増税で防衛費を捻出する方針を決定しているが、財務省は23日、増税以外の財源確保策についても発表した。税外収入として、外国為替資金特別会計から約3・1兆円、財政投融資特別会計から約6000億円をそれぞれ繰り入れるほか、コロナ対策で独立行政法人などにたまった積立金などの国庫返納も求め、計約4000億円を確保する。
これらの収入で4・6兆円をかき集め、23年度防衛費増額の財源として1・2兆円を充て、残りの3・4兆円を新設する「防衛力強化資金」にプール。24年度以降の財源とする。ただ、こうした財源は「必死でかき集めた一時的な財源」(経済官庁幹部)にすぎず、安定財源にはなり得ない。
新規国債発行35兆円超 続く財政悪化
日本には戦時国債を乱発して戦争に突き進んだ反省がある。政府はこれまで防衛費を建設国債で賄わない方針を掲げてきたが、23年度は防衛費に充てる建設国債の発行に踏み切る。当初予算案全体では、新規国債の発行額が35兆円を超える。前年度から減少したものの、累計の発行残高は増え続けており、23年度末で1068兆円を見込む。国債依存の財政構造が強まれば、防衛費の膨張に歯止めが利かなくなる懸念がある。
防衛力を強化するうえでも財政…
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