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国内外の異なる部署で取材する14人の中堅記者が交代で手がけるコラム。原則、毎日1本お届けします。

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「財政再建派」の懺悔と希望

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23年度当初予算案の決定に向け臨時閣議に臨む岸田文雄首相(中央)=首相官邸で2022年12月23日午後5時8分、竹内幹撮影
23年度当初予算案の決定に向け臨時閣議に臨む岸田文雄首相(中央)=首相官邸で2022年12月23日午後5時8分、竹内幹撮影

 14人の記者がつないできた当コラムも、2022年はこれで打ち止めとなります。世間はクリスマスムード一色ですが、空気を読まずに本日も、前回(12月11日)に引き続き日本の財政についてまじめに考えてみたいと思います。【経済部・赤間清広】

 東京都内の喫茶店で向き合った男性は、絞り出すようにこう答えた。

 「この20年で最も変わったこと? 政府・与党から借金を重ねる怖さが消えてしまったことです。『国債をどんなに増発しても大丈夫』と公言する人まで出てきてしまった」

 声の主は、慶応大の土居丈朗教授(52)。20年近くにわたり、数多くの政府系会議の委員を務めてきた財政学の第一人者だ。

 現在も政府の有識者会議「全世代型社会保障構築会議」や、財務相の諮問機関、財政制度等審議会などの委員として活躍している。

 こうした会議で土居さんは、終始一貫して財政再建の重要性を訴えてきた。

 しかし、現実はどうか。

 岸田文雄政権が23日に閣議決定した2023年度当初予算案の歳出総額は114兆円を超え、11年連続で過去最大を更新した。

 これに対し、税収を70兆円弱。足りない分は35兆円規模の新規国債発行で補うという相変わらずの肥大化予算だ。

 なぜ、財政再建を叫ぶ専門家の声は、政治に、そして国民に響かないのか。

 それは毎日新聞紙面で政府の放漫財政を何度も批判してきた自分自身への問いかけでもある。

 土居さんが真っ先に挙げたのが、アベノミクスが日本に刻んだ「弊害」の深さだ。

 安倍政権が打ち出したアベノミクスの特徴は、何よりその分かりやすさにある。

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