母は開拓者、父は無宗教「私に信じる心はあるか」 現役2世の迷い
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親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多くの当事者がその体験を語り始めています。信仰とは、家族とは、生きるとは。寄せられた「声」をシリーズで届けます。
声を聞いて・宗教2世(6)信二の場合
2本のレールの上でしか走れないという制約の中に無限の可能性がある。多くの列車で旅をしてきた信二(50)=仮名=にとって、それが鉄道の魅力だ。
一定の速度で移動しながら、車窓から見える四季折々の風景は変化し続ける。その振動に身を委ねると、どこまでも遠くへ行けそうな気がする。
神奈川県に住む信二は、キリスト教系新宗教「エホバの証人」の2世信者だ。今も信仰を続けている。そのレールは母が敷いたものだったが、鉄道と同じで、教義という制約の中に喜びや楽しみを見いだしてきた。
ただ、信二の人生は「迷い」とともにあったとも言う。そのわけに耳を傾けてみたい。
「いつか死ぬ」不安、求めた答え
母が入信したのは1972年。信二が生まれて間もなくのことだ。胸に抱いた我が子への愛情を感じると同時に、「自分も、子どももいつかは死ぬ」と思うと不安になった。
当時、日本では学生運動が過激化。仲間内で暴力を振るう凄惨(せいさん)な事件も相次ぎ、「なんで人はいがみ合うんだろう」と悩んでいた。
「聖書に答えが書いてありますよ」。自宅を訪れた信者にそう誘われた母は、聖書研究に没頭した。5年後、水の中に全身を浸すバプテスマ(浸礼)を受け、本格的な伝道生活に入った。
幼い信二にとって、母の後ろについて地域の家々を訪ねて歩くのは苦痛ではなかったという。世の中にはいろんな考えの人がいると実感できたし、母の話に関心を示してくれる人がいれば子ども心にもうれしかった。
教義上、クリスマスや誕生日を祝えないことも「人は人、自分は自分」だと割り切った。中学の時、母は月90時間ほどを伝道にささげる「開拓者」になった。
弟や2人の妹も信者だが、父だけは信仰を持たなかった。保険代理店を経営していた父は、疑わしいもうけ話に手を出すことが多く、母は苦労した。高校を卒業した信二は「お目付け役」として事務を手伝ったが、仕事のトラブルは続いた。20歳の時、両親は離婚した。
連載「声を聞いて・宗教2世」、次回は国際結婚し、異国の地で夢破れた「旧統一教会」2世、貴子の声です。
病んだ心、探した居場所
信二自身も順風満帆に人生を歩んできたわけではない。
20代の頃は信者仲間の誘いで建設関…
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