100円稼ぐコストは1万9000円 「行き止まり路線」の進む道

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上総亀山駅の先にある線路の終点部分。当初の計画ではこの先も延伸させ、外房側までつなげる予定だった=千葉県君津市で2022年12月8日、山本佳孝撮影
上総亀山駅の先にある線路の終点部分。当初の計画ではこの先も延伸させ、外房側までつなげる予定だった=千葉県君津市で2022年12月8日、山本佳孝撮影

 100円稼ぐコストが1万9110円――。JR東日本が公表した2021年度のローカル線の収支状況で、こんな衝撃的なデータが明らかになった区間が千葉県にある。JR東管内で収支率ワーストタイの、その区間があるのは房総半島を走る久留里線(全長32・2キロ)。路線図を見ると、「くるり」という名前の響きとは裏腹に、東京湾側の内房地域から外房へと延びる線路が突然途切れたようになっている。この「行き止まり路線」が生まれ、存続してきた背景にはその時々の状況に翻弄(ほんろう)された歴史があった。【山本佳孝、浅見茂晴】

収支率0.5%

 「厳しい利用状況を理解いただきながら、地域の皆様と持続可能な公共交通の在り方を議論したい」

 22年11月25日に開かれたJR東日本千葉支社の定例記者会見。久留里線の今後を問われた中川晴美支社長はこう説明した。「鉄道」ではなく、バスなど他の形態も含めた「公共交通」という表現を使ったところに、この路線が置かれた厳しい現状がうかがえた。

 JR東は22年、利用者が少ないローカル線の収支を初めて公表した。新型コロナウイルス禍前の19年度の輸送密度(1日1キロ当たりの平均旅客輸送人員)が2000人未満の路線や区間を対象とし、7月に19年度と20年度の実績を公表。11月には21年度分も明らかにした。

 公表対象の35路線66区間はほとんどが東北や甲信越のローカル線。しかし、東京に隣接する千葉にも苦戦を強いられている路線・区間があった。主に房総半島を走行する路線で、中でも久留里線の収支の厳しさは目を引く。

 久留里線の収支データは木更津―久留里間(22・6キロ)と、久留里―上総(かずさ)亀山間(9・6キロ)の2区間に分けられる。木更津―久留里間は21年度の収支を見ると、営業費用8億7500万円に対し、収入は6800万円。文字通りの「大赤字」だ。

 久留里―上総亀山間になると、更に悪化する。21年度の収入はたったの100万円。これに対し、営業費用は2億8100万円で、収支率は0・5%しかない。JR東の管内では、東北の陸羽東線鳴子温泉(宮城)―最上(山形)間と並び、「最悪」の赤字区間となっている。

なぜこんな「形」に

 利用者が伸びない理由の一つに、鉄路が房総半島の真ん中で「行き止まり」になっていることもあるとされる。こんな形になった歴史をひもといてみた。

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