「まるで家族ごっこ」母に包丁を向けられた夜 名付け親は教団会長
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親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多くの当事者がその体験を語り始めています。信仰とは、家族とは、生きるとは。寄せられた「声」をシリーズで届けます。
声を聞いて・宗教2世(9)愛美の場合
「私の名前、どうやって付けたの?」。小学生の時、母に聞いた。名前の由来を調べる作文の宿題。「どんな意味が込められているんだろう」。わくわくしていた私に、母は答えた。「クボキさんが付けたのよ」
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の初代会長、久保木修己氏のことだ。驚きと失望で涙を浮かべながら、原稿用紙をうその話で埋めた。
埼玉県で暮らす愛美(まなみ)(45)=仮名=の両親は、旧統一教会が日本で本格的な活動を始めた1960年代に入信した。愛美も幼少時から教団本部に通うなどし、「祝福2世」として将来を期待された。その重荷が彼女の心をどうむしばんだのか。愛美の話を聞いてみたい。
100人の集団生活
旧統一教会が日本で宗教法人として認証された64年。久保木氏は別の宗教団体から移る形で初代会長に就いた。愛美の母はその団体にいた縁で久保木氏に誘われ、旧統一教会に入信。父もやがて信者になった。
幼少の頃、母は布教活動で忙しく、愛美はほとんどの時間を教団系列の保育園で過ごした。100人ほどの集団生活。金曜の夜に自宅へ帰り、日曜の夜には保育園に戻った。
「教祖夫妻を親と敬うよう教えられ、家で過ごす週末はまるで家族ごっこだった」と愛美は振り返る。
小学1年になると、本格的な2世教育が始まった。自宅から1時間以上かけて東京・渋谷の教団本部に通い、教義を学ぶための紙芝居を見る。
「韓国語が世界共通語になる」と言われ、韓国語の勉強も始まった。目を輝かせる子もいたが、愛美は「本当かな」と違和感を募らせた。
小学4年の頃、教団本部へ向かうために乗り換える駅で足がすくんだ。半年ほど母に無断で礼拝などを休み、ばれた時は何度もほおをたたかれた。
連載「声を聞いて・宗教2世」、次回は幼い息子にむちを振るったことを後悔し続ける「エホバの証人」1世、良子の声です。
「産むこと」への恐怖
将来は教団が選んだ相手と結婚し、子どもを産んで幸せな家庭をつくりなさい――。そんな教えが重荷だった。
小学5年で初潮を迎えた時、「子どもを産める体になってしまった」と恐怖感にとりつかれた。夜眠れず、…
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