「透明な存在だった」オウム2世、夜通しの読経 脱会後も「地獄」
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親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多くの当事者がその体験を語り始めています。信仰とは、家族とは、生きるとは。寄せられた「声」をシリーズで届けます。
声を聞いて・宗教2世(11)咲の場合
富士山のふもとは、極限まで冷え込んでいた。大人の信者に交じり、冬の夜道をひたすら歩く。心は悲鳴を上げていた。「帰りたい、帰りたい……」
水ぼうそうを患った体は熱を帯び、足元がふらつく。遠くに見える民家の明かりがうらめしい。「なんで私はこんなことをしているんだろう」。気に留めてくれる人は誰もいなかった。
咲(さき)=仮名、40代=はオウム真理教の元2世信者だ。小学生の頃、母に連れられて関東の道場に通った。
「ほら、私もできるよ」。ヨガをほめてもらうのがうれしかった。習い事感覚で始めたが、その先に悲劇が待ち受けているとは思いもしなかった。
れんげ座でマントラ、発疹も「浄化」
母が帰依したのは、夫婦関係の不和が原因だ。父の浮気で心のバランスを崩した。
「前世のカルマ(業)のせい。あなたが悪いわけではない」。他の信者から説かれて心が楽になった。持病のアレルギーも呼吸法で改善したように感じ、信仰にのめり込んだ。
咲も平日は夜、週末はほぼ一日中、修行に励んだ。足をれんげ座に組み、教祖のマントラ(呪文)が録音されたカセットテープを繰り返し聞いて復唱した。
中学に入ると、修行は激しさを増した。静岡県富士宮市の教団施設。10日間の集中修行では暗く寒い夜道を歩かされ、側溝に落ちそうになった。
同じ姿勢で夜通しの読経。居眠りすると指導役が床をたたいて起こした。水ぼうそうの発疹が赤くつぶれても、大人たちは「浄化が起きているね」と言うだけだった。
「死の世界」を体験するという修行もあった。今では薬物が使われたとわかるが、教祖から渡された紙コップ入りの液体を飲み、強烈な幻覚にさいなまれた。
ハルマゲドンが来る
宿題をする余裕もなく、成績はみるみる落…
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