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消えゆく地方の寺 後世に記録伝える仕組みを=川瀬慎一朗(中部報道センター)

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解体前の久昌寺。地域の誇りだった=愛知県江南市で2022年4月、川瀬慎一朗撮影
解体前の久昌寺。地域の誇りだった=愛知県江南市で2022年4月、川瀬慎一朗撮影

 織田信長の側室にして、最愛の女性とされる吉乃(きつの)が眠る久昌寺(きゅうしょうじ、愛知県江南市)が昨年、取り壊された。由緒ある寺だったが、市が保存の可否を検討したのは、解体工事が始まってから。結局、本格的な調査が行われないまま、姿を消した。かつて地域社会のよりどころだった寺は、各地で存続の危機を迎えつつある。人知れずなくなる前に、歴史的建造物である寺の価値を調べ、後世に伝える仕組みを作れないだろうか。

 市史などによれば、寺は1384年創建で、地元有力者だった生駒家の菩提寺(ぼだいじ)にあたる。吉乃は3代当主・家宗の娘。生駒家の屋敷で暮らしていた時に信長と出会い、側室となった。後に岐阜城主となった長男信忠と次男信雄、徳川家康の長男信康の妻となった徳姫をもうけたという。

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