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いきいき、安心、なかよし居住の実現――。1990年代、そんなうたい文句とともに、「コレクティブハウジング」と呼ばれる公営住宅が兵庫県内に相次いで誕生した。
95年の阪神大震災で家を失った被災者が、支え合って住めるよう配慮された国内初の取り組みだ。しかし、震災から28年を迎える現地を訪ねると、かつての理想は影を潜め、「超高齢化」社会の現実が忍び寄っていた。
体操や食事会 孤立を防ぐ
「いち、に、さん、し」。2022年12月下旬、兵庫県宝塚市にある県営住宅。1階にある広い共用スペースで、お年寄りの住民約25人が「いきいき百歳体操」に励んでいた。震災後の98年に完成したコレクティブハウジングの一つだ。
腕や脚を曲げ伸ばしし、約40分の体操が終わると「お疲れさまでした」と声が上がる。住民らは備え付けのキッチンで手作りのケーキやコーヒーを楽しみ、会話を弾ませた。
この住宅には約30人が暮らす。毎週1回の体操のほか、クリスマス会などの食事会も月1回開催。企画や運営の中心になる自治会長の児玉美知子さん(73)は「みんなで和気あいあいやって、孤立しない。ここに住んで幸せと言ってくれる人もいる」と笑う。
コレクティブは「集合的」という意味で、70年代の北欧で生まれた住宅思想とされる。兵庫県では災害復興公営住宅として導入され、97年以降、神戸、尼崎、宝塚市に計10カ所整備。今は計約370人が暮らす。
住民の部屋はそれぞれ独立し、プライバシーが保たれる一方、共用スペースにテーブルや椅子、台所などが備わり、住民の交流を促す仕組みだ。
震災で自宅が全壊し、完成当初から宝塚の住宅に住む児玉さん。「体調が悪くなった住民がいて、救急車に同乗したこともある。普通のマンションにはない良さがここにはある」と説明する。
だが、その交流が失われた住宅も多い。
共用スペースに南京錠
「コレクティブ、ってなんですか」。…
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