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国外退去処分になった外国人の入国管理施設での扱いが注目を集めています。難⺠に厳しいと言われる日本。人権は守られている︖

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「病院持っていって」入管で悲痛な叫び 姉の映像公開求める遺族

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ウィシュマさんの死を巡る国家賠償請求訴訟で名古屋地裁に入る遺族ら=2022年12月12日、和田浩明撮影
ウィシュマさんの死を巡る国家賠償請求訴訟で名古屋地裁に入る遺族ら=2022年12月12日、和田浩明撮影

 アネー、アネー。監視カメラの映像には、シンハラ語で「お願いします」を意味するこの言葉を何度も訴え続ける姉が映っていた。つらくて見続けることはできない。それでも、真実を知るためには法廷で公開して多くの人に見てもらう必要がある。遺族はそう考えている。【和田浩明】

「担当さーん」「アネー、アネー」

 日本語が完全でないスリランカ人女性は「病院に持っていってお願い」と繰り返した。「息苦しい」とうめき、「担当さーん」と助けを求め、泣いているように見える時もあった。「アネー、アネー」と何度も口にし、嘔吐(おうと)もしていた。

 女性はウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)。2017年6月に「留学」の在留資格で来日後、学校に行かなくなって不法残留となり、20年8月に名古屋入管に収容された。21年1月中旬以降に体調不良が深刻化し、3月6日に病死した。健康上の理由などで一時的に収容を解く仮放免を2度、申請しており、1度目は不許可で、亡くなったのは2度目の申請中だった。

 点滴や病院への入院を求めたウィシュマさんに対し、職員は必要な措置を取らなかった。ただ、問題の原因は施設内の情報共有や人員確保の不十分さ、職員の教育不足にある。常勤医がいない医療上の制約があって適切な治療が施せなかった。出入国在留管理庁はウィシュマさんの死について、調査報告書でこう総括した。

 遺族は22年3月、違法な収容を継続して必要な医療を提供しなかったと訴え、国に慰謝料など約1億5600万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。

 施設は収容中のウィシュマさんの様子を監視カメラで撮影していた。約295時間分で、遺族は全データの開示を要求。地裁はこのうち約5時間分の提出を勧告し、国はDVD20枚を遺族側に提出した。冒頭のウィシュマさんの様子は、このデータを弁護士が確認したものだ。

 遺族は法廷での公開を求めており17日、非公開で対応が協議される。

「救急車をなぜ呼ばなかったのか」

 ウィシュマさんの妹2人は、最愛の姉が苦しむ姿を直視できない。ワヨミさん(30)は「姉が職員に助けを求める声が耳から離れない。私はそれほど強い人間ではないのです」。ポールニマさん(28)は「痛ましくて、見続けることができなかった」とし30分ほどで映像から目を背けたという。

 弁護団の駒井知会弁護士によると、亡くなる10日前の映像では、ウィシュマさんがティッシュやバケツに何かを吐いた。「あぶう、あぶう」という苦しそうな声も出ていた。…

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