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日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。
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来年の話をすると鬼が笑うと言いますが、卯(う)年の年頭に辰(たつ)年がテーマの「ドラゴンイヤー」を紹介します。舞台は11世紀初頭の中国・北宋時代。中国では辰年は災いの多い年と言われており(諸説あります)、干ばつや疫病、重税などが1年にわたって次々に襲いかかります。プレーヤーは皇族の一人となり、多難な辰年を乗り切って名声を獲得できるでしょうか。
人の命が軽すぎる
ゲームは1ラウンド1カ月で12ラウンドで終了。各ラウンドはアクション▽雇用▽イベント▽得点――の4フェーズに分かれています。お金やお米を得たり、頼りになる人物を雇用したりしてゲームが進んでいくのですが、イベントフェーズこそがこの作品の肝。最初の2カ月(2ラウンド)は平穏なのですが、3月からは花火を上げる「祭り」以外ろくなことが起きません。
4元の税金が臨時徴収され、足りない1元ごとに人物が1人死ぬ「王への貢ぎ」▽米を払い足りない分の人物が死ぬ「干ばつ」▽医者がいなければ人物が3人死ぬ「疫病」▽軍事力が一番弱いプレーヤーの人物が1人死ぬ「異民族の襲来」。資源が少し足りないだけで雇用した人物がどんどん死んでいきます。人の命がこれだけ軽いゲームはないかも。
激しい手番順争い
もう一つこの作品を特徴づけているのが手番順。七つのアクションは4人ゲームなら「2、2、2、1」とグループ化されており、やりたいアクションがかぶった場合、3元を支払う必要があります。「王への貢ぎ」が4元であることを考えると3元はかなりの高額。そのため手番順をできるだけ早くしたいのですが、雇用フェーズに有能な人物を雇うと手番順が不利になるというジレンマが。あえて手番順決定に有利な無用の人物を雇ってイベントフェーズで犠牲になってもらうという非情な戦略も有効です。
最初にどの月にどのイベントが起きるか公開(予言?)されているため、目標は立てやすいのですが、他プレーヤーの行動によって計画が台無しなることも。最終得点計算で一気に逆転するドラマチックな展開もあり、最後までハラハラドキドキ気が抜けません。少し古い作品ですが、筆者が特にお勧めしたい中量級です。
ゲームとは関係ありませんが、ミッキー・ローク主演の「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(1986年公開)という映画がありました。ニューヨークのチャイナタウンを舞台にしたバイオレンスアクションで、米国における民族差別問題を浮き彫りにした作品。米中対立が激しくなる中、もう一度見直したいですね。
激しくマジョリティー争い「兵馬俑」
中国テーマつながりでもう1作品を。時代はぐっとさかのぼって紀元前3世紀。「兵馬俑(へいばよう)」は、秦の始皇帝陵を守る像をつくる職人となって功績を競います。激しいマジョリティー(多数派)争いとアクション選択の悩ましさが特徴の重量級ゲームです。
まずはボード左上のアクションホイールに注目。兵馬俑の材料となる粘土や特殊能力を買うためのコインを得たり、乾いた粘土を湿らせて使えるようにしたり。あるいは職人を名工にパワーアップしたり。さまざまなアクションのアイコンが3重のリングに描かれています。プレーヤーは手番になったら自分の職人をホイールの外側1カ所に派遣。選択した場所のアクション三つをホイール内側から順番に実行していきます。やりたい組み合わせのアクションがセットになっているとは限りません。2コインを支払えば内側か中間のリングを1目盛り回転させてずらすことも可能なのですが、コインもまた貴重。どこまで妥協するかの判断に毎手番迷います。
監察官にいいところを見せたい
右上のスペースが始皇帝の陵墓。2~4個の粘土を支払って兵馬俑をつくるアクションを選択すれば、4種類から好きな兵馬俑を選んで設置できます。同じ種類の兵馬俑を隣接して置けばゲーム終了時に得点になるほか、毎ラウンドの終わりに監察官である赤い御史駒がいる段と列で単独最多なら7点、1個でも自分の兵馬俑があれば3点を獲得。さらにラウンドごとの決算条件(陵墓右下のエリアでの兵馬俑の最多など)があり、どこに兵馬俑を設置するかが悩ましいのです。
アクションホイールのリングがずらされると一から考え直す必要が出てくること。御史駒を動かしたり一度設置した自分の兵馬俑を動かしたりする特殊能力もあるので陵墓の盤面が劇的に変化すること。このメカニクスからダウンタイム(手番までの待ち時間)が長くなりがちなのが欠点ですが、兵馬俑フィギュアの造形も素晴らしく満足感の高い作品となっています。【野地哲郎】=次回は1月28日掲載
「ドラゴンイヤー」データ
2~5人用◆所要時間75~100分◆12歳以上対象◆シュテファン・フェルト作◆2007年初版
「兵馬俑」データ
2~4人用◆所要時間90~120分◆14歳以上対象◆ピゼマイスロー・フォーナル、アダム・クワピンスキ作◆2022年初版