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混迷を深める世界情勢のなかで、とるべき針路は――。日本を代表する国際政治学者が交代で論じます。

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人間の安全保障と複合危機 日本は国際協調リードを=東京大名誉教授・田中明彦

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銃身を結んだ拳銃の彫刻「非暴力」の前でウクライナ問題をめぐり声明を発表するグテレス国連事務総長=米ニューヨークの国連本部で2022年4月19日、隅俊之撮影
銃身を結んだ拳銃の彫刻「非暴力」の前でウクライナ問題をめぐり声明を発表するグテレス国連事務総長=米ニューヨークの国連本部で2022年4月19日、隅俊之撮影

 2023年の世界は、依然として100年に1度ともいうべき世界的複合危機のさなかにある。気候変動による影響はますます深刻化し、新型コロナウイルスは中国で感染爆発を続けている。ウクライナにおける戦争は、ウクライナとロシアの人々の双方に恐るべき犠牲を生み出しつつ、気候変動や新型コロナのパンデミック(世界的大流行)とも連動しながら世界中に深刻なエネルギー危機と食糧危機、そしてインフレをもたらしている。これらの複雑な連関の中で金利は上昇し、為替は変動する。先進国での景気後退が懸念される中、一部の開発途上国では深刻な債務危機=1=が起こっている。

 このような世界的複合危機の中で、23年、日本は主要7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国ならびに国連安全保障理事会の非常任理事国として世界的課題の解決に向けて重要な役割を果たしていかなければならない。どのような哲学と戦略をもって、日本はこの重責を果たしていくべきであろうか。

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