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少子高齢化が進み地縁血縁が弱まっている。新型コロナウイルス禍などで家族の「絆」は強調されたが、安倍晋三元首相銃撃事件など孤独の末に暴発する人もいる。人は何らかのつながりが必要なのかもしれない。無縁社会をどう変えるか。地域の子どもに無料や低額で食事を提供する「こども食堂」はその可能性を秘める。社会活動家、湯浅誠さんが解き明かす。【聞き手・鈴木英生】
コロナ禍で倍増したこども食堂
――こども食堂は、全国で急増していると聞きます。湯浅さんたちの調査で、コロナ禍前の2019年は3718カ所でしたが……。
◆昨年末には7331カ所と倍増しました。あと2年もすれば、全国の中学校数1万強を超えるでしょう。
――コロナ禍の下でも急激に増えたのが驚きです。
◆これまでも、大きな災害が起きるたびにぐんと増えました。非常時には、人と人とのつながりや支え合いの大切さが痛感されるからです。スーパーや家庭で余った食材を寄付するなどの動きが広まり、地域でこども食堂を支える傾向も強まったと思います。ただ、こども食堂は文字通り「密」に人が集う活動です。さすがに対面形式での実施は、20年の学校一斉休校時には1割程度まで減りました。今は半分くらいが対面実施になっています。多くは月数回程度開いています。
――対面以外の実施形態というと?
◆食材や弁当を配達したり、取りに来てもらったりする活動が多いですね。コロナ禍で生活の厳しい家庭が増えただけでなく、自治体が生活困窮者にこども食堂を紹介する例も増えて、貧困層対策という面の機能が高まっています。対面実施に戻しても、並行して配達などを続けるところが目立ちます。
――そもそもが、こども食堂は貧困層対策の場では?
◆いえ、貧困層向けに特化したところもありますが、8割方は対象を限定しておらず、親や多くの地域住民らが自由に参加して時間を過ごす、世代間交流の場です。富裕層の多い東京都港区でも、子どもを私立小学校に通わせているため地元とのつながりが希薄な親子が来るという、こども食堂もあります。
物価上昇が運営に直撃
――東日本大震災の翌年、12年に東京都大田区で初めてできてから約10年。急増した理由は?
◆人口減少と少子高齢化が進むなかで、「地域で人と人が関わるきっかけを作りたい」という潜在的な欲求にフィットしたからでしょう。何の目的も掲げずに場を作るのは難しいですが、…
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