魅力的な選択肢かリスクか 原発推進を再加速するフランスの背景

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フランス北西部コタンタン半島にあるフラマンビル原発。建設中の欧州加圧水型原子炉はトラブル続きで、稼働開始が遅れている=2022年11月15日、仏北西部フラマンビル村で宮川裕章撮影
フランス北西部コタンタン半島にあるフラマンビル原発。建設中の欧州加圧水型原子炉はトラブル続きで、稼働開始が遅れている=2022年11月15日、仏北西部フラマンビル村で宮川裕章撮影

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、一度は原発縮小にかじを切ったフランスが、再び原発推進を加速させている。その背景には何があるのか。どんな課題が横たわっているのか。原発推進を主張するセシル・メゾヌーブ氏と、反対派のベルナール・ラポンシュ氏の論客2人に聞いた。【聞き手・宮川裕章】

原発、再び魅力ある選択肢に

 ■仏シンクタンク「モンテーニュ研究所」上席研究員・セシル・メゾヌーブ氏

 ――福島第1原発事故後の欧州の原発の状況を教えてください。

 ◆福島第1原発事故の後、欧州では原発の安全性に疑問の目が向けられ、原発はもはや過去のエネルギーであり、これからは再生可能エネルギーに向かわなければならないという意識が強まった。特筆すべきはドイツで、自国の脱原発を決めただけでなく、反原発を欧州各国に広めようとした。

 ところがロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、欧州は何年も続くであろうエネルギー供給の危機に直面した。エネルギー供給の安定性、安全性を求める国にとって、原子力は再び極めて魅力ある選択肢となった。欧州は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を立てており、脱炭素、電気自動車(EV)へのシフトが進む中、温室効果ガスの排出量が少なく、電力供給の予測が立てやすい原発を選択することは、絶対的な戦略となった。

 ――福島第1原発事故前の00年代の「原発ルネサンス」の再来ですか。

 ◆当時の状況と現在は異なる。福島の事故前は、国家が競争力向上や脱炭素に向け、大手電力会社や原子力技術を持つ企業と組んで原子炉を販売するのが主流だった。現在はこれに加え、全く新しい特徴として、民間企業や地方自治体などが小型モジュール炉(SMR)を開発する動きが、ポーランドやオランダ、英国、フランスなどで出ている。

 ――SMRは出力が通常の原発の約3分の1の30万キロワット程度で、工場で部品を組み立てるなどの特徴があります。

 ◆従来、原子炉は出力が大きいほど「規模の経済」が働き、建設、設計、安全対策などの固定費を回収しやすいと考えられてきた。だが一方で、原子炉を建設する際の大きな問題は、10年以上かかる建設期間の長さだった。この点、SMRは4~5年で建設できるため初期投資額が少なく、さらに規格化、シリーズ化でコストを削減できる。そのため投資家からの資金調達が容易になる。

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