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年末年始、ロシアで過ごして 戦時色なきテレビの不気味さ=金平茂紀

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 この年末年始を、おそらく現在多くの人が行くのをためらうであろう国で過ごした。ロシアである。12月30日からまるまる1週間、首都モスクワに滞在した。そこで見聞きしたことはこのコラム欄だけでは到底書ききれないが、放送されていたテレビがどんな番組を流していたのかについて、ご報告しておきたい。

 一言でいえば、まるでかつてのソ連時代に戻ってしまったかのような、自由のないテレビになり果てていた。奇妙なことに、僕がウクライナで見た公共放送のテレビが戦争一色だったのに対し、モスクワで見たテレビ番組はまるで戦争が別世界であるかのように笑いや喜びにあふれ、戦時色がほとんど表に出ていないのである。パラレルワールド。僕は、言いようのない気持ちの悪さを感じた。

 ロシアのテレビ局も日本と同様に特別編成がとられていて、新年を祝う特番がかなりの時間を占めていた。そこではおのずと歌番組、バラエティー番組中心だった。さらに特徴的なのは、ロシア正教会の聖職者たちが頻繁に登場し、新年の祈りなどをする様子が延々と流されていたことだ。日本の感覚で言えば、初詣でにぎわう神社やお寺から、延々と生中継しているようなものか。いや、それ以上の大きな意味があるのではないか。今回のウ…

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