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加速する少子化への対応は、喫緊の課題だ。「異次元」と強調するのであれば、従来の政策の焼き直しでは意味がない。
岸田文雄首相が年頭の記者会見で、「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。「子どもファースト」の社会を作り、出生率の低下に歯止めをかけて上昇に転じさせるという。
状況は深刻だ。昨年の出生数は80万人を下回ることが確実視されている。2016年の100万人割れから、わずか6年で5分の1も少なくなる。
首相は、児童手当など経済支援の強化、子育て支援サービスの充実、働き方改革の推進を3本柱に掲げる。とはいえ、高校教育の無償化や待機児童解消など、これまでの政策では少子化に歯止めをかけられていない。
子どもを持つか持たないかは個人の選択だ。しかし、持ちたい人が持てない現状は変えなければならない。そのためには、社会の構造的な問題にメスを入れることが欠かせない。
まず、経済格差だ。30代前半までの男女の8割強は結婚の意思がある。だが、男性のうち正規雇用では婚姻率が約6割あるのに対し、非正規は約2割にとどまる。
日本は子どもを持つ家庭の経済負担が重い。塾や大学の授業料など教育に多額の費用がかかることが、理想の数の子どもを持たない大きな理由になっている。
児童手当は子育て世帯の家計の足しにはなるが、根本的な格差是正にはつながらない。
少子化は日本社会の活力にかかわる問題だ。幅広い政策を少子化対策の観点から見直し、効果が上がるようメリハリをつけて実施する必要がある。
安心して産み育てる環境を整えるには、安定財源が欠かせない。岸田首相は、子ども関連予算の倍増に向けた財源確保の道筋を6月の「骨太の方針」で示すという。
自民党の甘利明前幹事長が財源として消費増税に言及したが、政策の中身を詰めるのが先であり、順番が逆だ。
子育ての負担が家庭に集中している現状を変え、社会で支える。そのための仕組みを作るのが政治の役割だ。あらゆる政策を総動員して取り組まなければならない。