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パンデミックの先に

自分の苦しみも忘れる?新型コロナ後遺症で認知症リスク急増の恐れ

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米ワシントン大公衆衛生研究所などのチームが公表した論文の一部。認知症リスクが高まるとの衝撃的な結果が明らかに
米ワシントン大公衆衛生研究所などのチームが公表した論文の一部。認知症リスクが高まるとの衝撃的な結果が明らかに

 国内で初めて新型コロナの患者が確認されてから15日で3年が経過した。パンデミック(世界的大流行)を経て、社会はどう正常化していくのか。各分野の現状を連載しながら、ウィズコロナ時代を展望する。

 連載「パンデミックの先に」は、全7回です。
 このほかのラインアップは次の通りです。
 第2回 重くのしかかる後遺症
 第3回 ワクチン不信の背景
 第4回 子どもの発達に影響
 第5回 飲食店が見いだした活路
 第6回 移住で浮かんだ課題
 第7回 途上国「コロナは過去の話」

 「仕事のメールを打つのも大変」――。頭痛や倦怠(けんたい)感など、新型コロナウイルス感染症の後遺症に苦しむ男性は、メモを読み上げながら医師に症状を訴えた。記憶力や思考力の低下で記録に残さないと自身の苦しみも正確に伝えられない。

 コロナに感染すれば誰しもがなり得る後遺症では、記憶や認知の機能が衰えることが明らかになりつつある。治療法は確立しておらず、昨年秋には米国の研究チームが、感染すると認知症の一つであるアルツハイマー病を1年後に発症するリスクが高まるとの結果をまとめ、関係者に衝撃を与えた。

 60歳を迎えたこの男性は兵庫県内に住み、会社員として働く。スマートフォンのメモ帳に、「朝起きて布団の上にも座っていられない」「倦怠感で何もやることが出来ない」など日々の困りごとを打ち込むのが日課だ。男性が通院する医学研究所北野病院(大阪市)の丸毛聡医師に症状を伝えるのにメモは欠かせない。

 「以前は記憶から順序立てて説明することは何の苦もなくできた。集中して考える力も落ちていて、メモがあっても文字を追うのが難しい時がある」。男性は苦しい胸の内を吐露する。

 こうした症状を自覚し始めたのは昨年9月ごろ。仕事から帰宅して家族だんらんの時間でも、その「苦しみ」から逃れることはできない。台所に行っても何をしに来たか忘れてしまうことがある。探し物も以前より増えたように感じる。何に対しても関心が湧かなくなり、「家族からの相談事を受けるのもおっくうになった」とこぼす。

 新型コロナに感染したのは昨年7月下旬のこと。38・6度まで熱は上がったものの、数日で回復する軽症だった。ワクチンは3回接種しており、他の感染者と比べて変わった症状はないはずだった。

 発症から10日が過ぎた頃から「異変」が起きた。せきが止まらず、強い倦怠感にさいなまれ、仕事に戻れなかった。8月下旬から在宅勤務で復帰したが、頭痛などで「ほとんど仕事にならなかった」と振り返る。そんな時期に記憶障害のような症状も表れ始めた。

連載「パンデミックの先に」、次回は重くのしかかる後遺症について報告します。

長期的な神経障害のリスク

 後遺症診療に取り組む丸毛医師は「感染に伴う脳の炎症が続いていて、思考や記憶に影響が出ている可能性が考えられる」と説明する。

 味覚や嗅覚障害に加え、記憶障害なども後遺症の症状として知られているが、米国では脳に関わる後遺症として驚くべき研究結果が明らかになった。

 それは米ワシントン大公衆衛生研究所などのチームが昨年9月に医学誌ネイチャー・メディシンで発表した1本の論文だ。退役軍人の全国医療データベースから、新型コロナ患者15万4068人(平均61・4歳)と、感染していない563万8795人(同63・4歳)のデータを主に解析した。

 すると、コロナ患者は感染から1年後に記憶と認知機能に障害が出るリスクは、感染していない人に比べて1・7…

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