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20年前、若い女性に一冊の本を贈った。「ビリー・ジョーの大地」(カレン・ヘス著)。リストカットなど自傷行為を繰り返し、もがきながら、短歌を書いていた彼女に、私は詩のような小説のようなその本を贈ろうと思った。理由もわからないままに。
自傷行為に触れた本などではなかった。舞台は1934年、大恐慌まっただ中の米国オクラホマ。麦は嵐と干ばつに襲われ、土ぼこりが何もかもをだめにしてしまう。そんな土地で両親と暮らすピアノ好きの14歳の少女ビリー・ジョー。事故で母を亡くしても、絶望の淵からはい上がろうとする。
昨年暮れ、同書の訳者で詩人の伊藤比呂美さんを初めて取材した。ひょんなことからこの本の話題になった。伊藤さんはかつて離婚後、12歳、10歳、1歳の3人の娘を連れて米国に移住した。長女の摂食障害のことは著書に書いてきたが「次女サラ子のことは本当にきつくて書けなかった」と明かす。
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