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広島・長崎原爆

1945年8月、広島・長崎へ原爆が投下されました。体験者が高齢化するなか、継承が課題になっています。

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厚労省、長崎原爆の「黒い雨報告書」否定 「被爆体験者」救済退ける

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長崎県庁=長崎市で、平川義之撮影 拡大
長崎県庁=長崎市で、平川義之撮影

 長崎県は17日、原爆投下後の長崎でも「黒い雨」が降ったと結論づけた県設置の専門家会議の報告書に対し、厚生労働省から「降雨の客観的記録がないことは、過去の訴訟の判決で確定している」などと内容を否定する見解を示されたと発表した。県が報告書を基に求めた「被爆体験者」の救済についても「過去の訴訟の事実認定と整合性を欠く施策は困難」と退けられたことを明らかにした。

 広島原爆の黒い雨を巡っては2021年7月の広島高裁判決が、国が定める援護区域外で黒い雨に遭った原告84人全員を「放射性微粒子を体内に取り込んで健康被害を受ける可能性があった」などとして被爆者と認定。国は22年4月、広島原爆の黒い雨体験者に被爆者健康手帳の交付を始めた。

 これを受けて長崎県は、長崎の被爆地域外にいたため被爆者と認定されない被爆体験者の救済を求め「長崎でも原爆投下後に降雨があった」と説明。22年7月には当時の住民の証言集などを検証した専門家会議の報告書を厚労省に提出していた。

 厚労省は16日付で県に示した見解で、原爆投下後の降雨について過去の被爆体験者訴訟を例示し「被爆未指定地域にあった者が黒い雨に遭ったとする客観的な記録はないとされている」などと改めて指摘。1999年度に長崎市などが実施し、専門家会議の報告書の基になった住民証言調査も「(過去の訴訟で)降雨の客観的な記録と認められていない」とした。

 その上で、報告書の内容について「過去の訴訟の解釈や証言集の信ぴょう性に関する一つの評価を一方的に論じており、過去の訴訟の判示とも矛盾する」と否定。長崎でも黒い雨が降ったかどうかは更なる検証が必要で、広島高裁の原告と同じ事情にあった者とは認められないとした。

 厚労省の見解を受け、大石賢吾知事はこの日の記者会見で「救済につながると期待していたので残念だが、被爆体験者を救済すべきだという県の考えは変わらない。国との協議を継続したい」と述べた。

 長崎地裁では被爆体験者44人が被爆者手帳の交付を求めて訴訟を続けている。岩永千代子原告団長(86)は厚労省の回答について「なぜ長崎だけが差別され続けるのか」と語った。厚労省は4月から、これまで精神疾患と合併症に限定してきた被爆体験者の医療費助成の対象にがんの一部を加える方針だが、原告団は「被爆体験者を『被爆者』と認めなければ根本解決にならない」と反発している。【樋口岳大、中山敦貴】

【広島・長崎原爆】

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