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「まだ不思議な感じで、でもしみじみうれしいです」。「この世の喜びよ」(群像7月号)で第168回芥川賞を受賞した井戸川射子(いこ)さん(35)は19日、記者会見で今の気持ちを聞かれ、こう述べた。兵庫県在住で、普段は高校の教壇に立つ国語教師。2019年、第1詩集が中原中也賞に選ばれた注目の詩人でもある。今月あった取材会では「言葉をすごく上手に使いたい。そのことだけが今は目標としてある」と言葉への強い思いをにじませていた。
受賞作はショッピングセンターを舞台に、喪服売り場で働く「あなた」の視点で描かれる。娘2人の子育てを終えた母の「あなた」は、フードコートの常連である15歳の少女と知り合う。2人のやりとりを軸に、喪服売り場の同僚やゲームセンターで働く23歳の青年、そのゲームセンターに通うおじいさんと交流するさまが、ひたひたと寄せては返す時間の中で紡がれる。
自身は今年度、育休から復帰したばかり。ショッピングセンターは育休中、よく子供を連れて遊ばせた場所で「本当にお世話になった」と笑う。幼い2人の育児に追われる中、「でも日々に喜びはある。育児もそうですが、人と関われることも喜びだし、一人でストレッチするのも気持ちいい。そういうふうに、自分一人ででも、何人ででも、どう生きてても喜びを…
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