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森と海からの手紙

人の暮らしが自然と乖離していく時代。森と川と海から聞こえてくるささやきを萩尾信也客員編集委員がつづります。

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森と海からの手紙

五つの名を生き抜いた 療養所の歌人

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雪に覆われた栗生楽泉園のかなたに、浅間山が見える=群馬県草津町で2023年1月8日午後0時25分、萩尾信也撮影
雪に覆われた栗生楽泉園のかなたに、浅間山が見える=群馬県草津町で2023年1月8日午後0時25分、萩尾信也撮影

 長野との県境にそびえる活火山、浅間山(2568メートル)を望む群馬県草津町の町外れに、元ハンセン病患者が暮らす国立療養所「栗生(くりう)楽泉園」がある。

 1月8日午後、温泉街から雪道を3キロの森にある園内で、私はベッドにふした金夏日(キムハイル)さん(96)の傍らにいた。指先のない手を握り、口元に耳を寄せると、かすれた声がかすかに聞こえた。「天に召される前に、また会えたね」

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