特集

LGBT

性別にとらわれず自分らしく生きるために、声を上げる人たちが増えています。当事者の思いや社会の課題を追います。

特集一覧

地域の目?受験のため? 性別で違う頭髪校則なぜ 生徒たちの問い

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
髪形や服装に特に定めのない高校もある=東京都練馬区で2022年10月24日午後3時28分、後藤豪撮影 拡大
髪形や服装に特に定めのない高校もある=東京都練馬区で2022年10月24日午後3時28分、後藤豪撮影

 男子は髪の毛が耳にかからないようにといった、性別を理由に髪形を規定する校則に違和感を訴えている生徒たちがいる。性自認によるものなど事情はさまざまだが、その思いは一つだ。自分らしく学校生活を送りたい――。

 東京都足立区に住む高校3年のAさんは、生まれたときに割り当てられた性別は男性だが、性自認は「Xジェンダー」(性別を男女どちらとも言い切れない)に近いと感じている。性自認は女性に近づく時もあれば男性に近づく時もある。

 中学3年の時、性自認が女性に近づき、髪を伸ばしたいと思った。しかし、校則では「男子生徒は清潔感のある短髪とする」とされ、前髪や耳回り、襟足の長さも「眉が見える」「耳にかからない」などと決められていた。

 自身の性自認を伏せて、先生に「男子は髪が短いというのは偏見だ。男女共通のルールにしてほしい」と長髪を許可するようかけ合った。しかし、「地域の視線がある」などと認められなかった。「(性的少数者の)LGBTQの生徒がいれば個別で対応する」という回答はあったが、保護者から申し出が必要。親は性的少数者に否定的な態度で、自らの性自認を打ち明けておらず無理だった。

 「自分らしく学校生活を送りたいだけなのに」とストレスに感じ、勉強に手がつかないときもあった。2020年に校則も制服もない都立高校に進学。友人に少しずつカミングアウト(告白)し、現在は15センチほど髪を伸ばし、家族に内緒でスカートをはいて登校することもある。

    ◇

 大分市の大学3年、長谷夏幹(なつき)さんは6年前、県立高校に入学した2日後、耳が隠れるぐらいの長さだった髪が頭髪検査に引っかかった。校則で男女共に極端な長髪や変形の髪にならないよう決められていたが、校内に掲示された頭髪や服装の検査基準に、男子のみ「前髪は自然な状態で眉毛まで」など細かい規定があった。入学前には知り得ないことだった。

高校入学時の長谷夏幹さん(左)。髪が耳にかかっているとして切るように求められた。右は髪を切った後=長谷さん提供 拡大
高校入学時の長谷夏幹さん(左)。髪が耳にかかっているとして切るように求められた。右は髪を切った後=長谷さん提供

 小学生の頃から長めの髪が好きだった。先生から短髪の規則は「将来のため」と言われたが、長髪にどんな弊害があるかを尋ねても具体的な答えはなかった。違反した生徒は体育館に集められ、耳に1ミリでもかかれば切ることを求められた。従ったが、「好きで男性に生まれたわけじゃないのになぜこんな目にあうのか」と悲しかった。

 校則を変えたいとクラスの賛成多数を得て、生徒総会に議題を上げた。学校側は「大学受験の面接を基準としているので変えることはできない」と認めなかった。納得できず、全国13大学に質問状を郵送し、全大学から髪の長さを理由に不合格にすることはないとの回答を得たが、学校には「現状は違う」と取り合ってもらえなかった。

 校則を変えられないまま卒業。現在は「(出生時の戸籍の性別と性自認が異なる)トランスジェンダーの人も、男らしい格好が苦手な人もいる。性別を理由に身だしなみを強要するのはハラスメントだ」として、インターネット上で誰もが自分らしい髪形ができる社会を実現するための署名集めなどをしている。

 高校は取材に「校則はこれまでの常識や地域社会の要望などが積み重なってできたもの。ただ、LGBTQの生徒らのことも考え、現在は髪の規定は柔軟に対応している」とした。

    ◇

 文部科学省が児童生徒の問題行動などに対応するため10年に策定した教員用手引書「生徒指導提要」では、校則について「法令の規定は特にないが、判例では、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲内で制定する」と記載。生徒の行動などに一定の制限を課すことができ、制定の権限は校長にあるとしている。

 ただ、近年は「ブラック校則」と呼ばれる不合理な校則を是正する機運が強まっており、昨年12月に公表された同提要の改訂版では「少数派の意見も尊重しつつ、児童生徒個人の能力や自主性を伸ばすものとなるように配慮すること」などが盛り込まれた。

 子どもの権利に詳しい山下敏雅弁護士(東京弁護士会)は、性別で髪形の規定が異なる校則について「文科省がトランスジェンダーの生徒には髪形の自由などを一定は認めるべきだとしているのは評価できるが、その生徒だけ特別に見えてしまう可能性がある。みんなが自分らしい身なりをして良いというところから考えなければならない」と指摘する。

 その上で、「学校の規律が子どもの権利の侵害にならないようにすべきだとしている子どもの権利条約(日本も批准)の内容を盛り込みながら、校則を作る根拠や手順などのルールを法律で定めることが必要だ」と話している。【南茂芽育、小林遥】

    ◇

 皆さんの学校で、理不尽な校則はありませんか。記者に取材してほしいことを「つながる毎日新聞」(https://mainichi.jp/tsunagaru/)からお寄せください。専用フォームとLINEがあります。郵送も可。

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集