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青嵐の旅人

天童荒太さんの初の新聞連載小説。幕末・明治の激動期を、中央ではなく地方から、市井の人々の視点で見つめる物語です。

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青嵐の旅人

/2 天童荒太 高杉千明・画

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 少女の名はヒスイという。顔も知らない亡き父の命名だと、聞かされている。

 数えで十四、満で十二歳。きりっと締まった顔立ちは、よく少年と間違えられる。眉は太く、意志のみなぎる目をして、肩までの髪は後ろに回し、紐(ひも)できつく縛っている。

 背丈は同年代の少年たちより高く、山中を歩き回ることが多いため、細身に見えるが、足腰の筋肉は発達し、体力もあった。

 修験者の着る装束を、さらに歩きやすいよう簡素に仕立てた白い服を身にまとい、保存のきく食品や薬を詰めた紫色の袋を斜め掛けにしている。笠(かさ)はかぶらず背中に下ろし、自分の背よりも長い金剛杖(づえ)を手にしている。

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