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少女の名はヒスイという。顔も知らない亡き父の命名だと、聞かされている。
数えで十四、満で十二歳。きりっと締まった顔立ちは、よく少年と間違えられる。眉は太く、意志のみなぎる目をして、肩までの髪は後ろに回し、紐(ひも)できつく縛っている。
背丈は同年代の少年たちより高く、山中を歩き回ることが多いため、細身に見えるが、足腰の筋肉は発達し、体力もあった。
修験者の着る装束を、さらに歩きやすいよう簡素に仕立てた白い服を身にまとい、保存のきく食品や薬を詰めた紫色の袋を斜め掛けにしている。笠(かさ)はかぶらず背中に下ろし、自分の背よりも長い金剛杖(づえ)を手にしている。
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