- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
「包みを開けてごらん」
昨年12月21日午前11時、突然の来訪者から箱を受け取った少女は、近くで見守る母からそう促された。少女の名はオーラ・イフセーバさん(8)。外で遊ぶのが大好きな3人兄弟の末っ子だ。
「いいの?」と言って、トナカイの絵があしらわれた包みを開けるオーラさん。目に飛び込んできたのは赤いマフラーに隠れるようにして入っていた縄跳びだった。
オーラさんがいるのはウクライナ南部ザポロジエ州にあるオリエホブという田舎町だ。ロシア軍の占領地はここから南へ数キロのところにあり、連日砲撃の被害にあっている。開戦前の人口は約1万5000人。住民の多くは遠くへ逃れ、今は1割ほどが地下での生活を続けている。
町のインフラ施設は破壊され9カ月間、水も電気もガスもない生活を強いられてきた。営業している商店もなく、人道支援のボランティアが届けてくれる食料などが生命線になっている。この日やってきたのはマリウポリからの避難者が立ち上げた支援団体のメンバー4人。防弾ベストにヘルメット姿のセルゲイさん(52)は、ドイツのキリスト教団体が用意したクリスマスプレゼントを笑顔でオーラさんに手渡した。
「スパシーバ(ありがとう)」と、はにかんで礼を言うオーラさん。前日に復旧したばかりだという電気に照らされた娘の表情をみて、母のスベットラナさん(49)は「毎晩砲撃を受ける音は激しく、壁越しに響いてきます。恐怖心でいっぱいの子供たちにクリスマスの楽しみが来るなんて思っていませんでした」。
ウクライナの支援者が活用している戦況地図アプリには、直近に砲撃や戦闘があった地点がマッピングされている。ザポロジエからハリコフにかけて弧を描くように連なる赤い点の数は1月14日時点で65ケ所。ちょうどロシア軍の占領地との境界線に重なる。そこに残る住民の数はどの町も人口の1割から2割程度だ。「避難するための蓄えがない」「子供や高齢者は長距離の移動や慣れない土地で暮らすのが不安だ」という声を耳にする。
氷点下20度にもなることがあるというウクライナで、冬を乗りきるため欠かせないのがまきストーブだ。マリウポリの支援団体は一つ50ドルで寄付を募り、1000個以上のストーブを無料で配布、設置してきた。ストーブはオーラさんが避難している地下室にもあり、最高気温が氷点下2度の今日も家族を守っている。
「雪だるまを作って遊びたい」と話すオーラさんの夢が実現する日を待ちながら。<写真・文 尾崎孝史(写真家)>(すべてウクライナで撮影)
時系列で見る
-
ロシア領海運航のLNG船向け保険、損保3社が8割値上げ
7日前 -
ポーランド首相、ウクライナへの戦車供与をドイツに要請へ
7日前 -
ウクライナ政府、副大臣を解任 発電機の調達巡る収賄容疑で逮捕
7日前 -
中古救急車、提供を ウクライナ支援で 松阪のNPO /三重
7日前 -
寄り添う気持ち、カイロに込めて 全国から31万1000個、山形で1陣出発 /山形
7日前 -
寄り添う気持ち、カイロと共に 福島・山形の市民有志が呼びかけ 全国から31万1000個集まる /福島
7日前 -
EU、ウクライナに710億円の追加軍事支援
7日前 -
「仕出し屋」の野心=大治朋子
7日前 -
日本、ウクライナの地雷除去支援へ 領土の3割が爆発物で汚染
7日前 -
厳冬のウクライナ 電気、ガスが止まった街に届いたプレゼント
8日前 -
北極海LNG開発が大ピンチ ロシア側が計画大幅修正、日本に逆風
8日前スクープ -
ザポロジエ州で砲撃戦 露が「優勢」と主張もウクライナは否定
8日前 -
露前大統領「大戦になれば勝つのは我々」 戦車供与巡り皮肉る
8日前 -
バルト3国、ウクライナへの戦車供与を要請 独に「平和回復に必要」
9日前 -
ロシア、日本との漁業協定交渉応じず 北方領土周辺、操業に影響
9日前 -
ドイツ製戦車の供与、結論出ず 独が慎重 ウクライナ支援国会合
10日前 -
「北朝鮮がロシアの民間軍事会社に兵器供給」アメリカが画像公開
10日前 -
ウクライナの加盟「できるだけ早く」 EU大統領が演説(1月20日)
10日前 -
米、ウクライナに追加軍事支援へ 歩兵部隊の前線展開に注力
11日前