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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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厳冬のウクライナ 電気、ガスが止まった街に届いたプレゼント

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避難中の地下倉庫でクリスマスプレゼントが入った箱をあけるオーラさん。年明けに現地を訪ねると自宅周囲の砲撃音は続いていた。「プレゼントの縄跳びは?」と声をかけると、「ここにしまってあるの」と物置から出してきた=2022年12月21日、写真家の尾崎孝史さん撮影 拡大
避難中の地下倉庫でクリスマスプレゼントが入った箱をあけるオーラさん。年明けに現地を訪ねると自宅周囲の砲撃音は続いていた。「プレゼントの縄跳びは?」と声をかけると、「ここにしまってあるの」と物置から出してきた=2022年12月21日、写真家の尾崎孝史さん撮影

 「包みを開けてごらん」

 昨年12月21日午前11時、突然の来訪者から箱を受け取った少女は、近くで見守る母からそう促された。少女の名はオーラ・イフセーバさん(8)。外で遊ぶのが大好きな3人兄弟の末っ子だ。

 「いいの?」と言って、トナカイの絵があしらわれた包みを開けるオーラさん。目に飛び込んできたのは赤いマフラーに隠れるようにして入っていた縄跳びだった。

ウクライナ・オリエホブ 拡大
ウクライナ・オリエホブ

 オーラさんがいるのはウクライナ南部ザポロジエ州にあるオリエホブという田舎町だ。ロシア軍の占領地はここから南へ数キロのところにあり、連日砲撃の被害にあっている。開戦前の人口は約1万5000人。住民の多くは遠くへ逃れ、今は1割ほどが地下での生活を続けている。

 町のインフラ施設は破壊され9カ月間、水も電気もガスもない生活を強いられてきた。営業している商店もなく、人道支援のボランティアが届けてくれる食料などが生命線になっている。この日やってきたのはマリウポリからの避難者が立ち上げた支援団体のメンバー4人。防弾ベストにヘルメット姿のセルゲイさん(52)は、ドイツのキリスト教団体が用意したクリスマスプレゼントを笑顔でオーラさんに手渡した。

 「スパシーバ(ありがとう)」と、はにかんで礼を言うオーラさん。前日に復旧したばかりだという電気に照らされた娘の表情をみて、母のスベットラナさん(49)は「毎晩砲撃を受ける音は激しく、壁越しに響いてきます。恐怖心でいっぱいの子供たちにクリスマスの楽しみが来るなんて思っていませんでした」。

 ウクライナの支援者が活用している戦況地図アプリには、直近に砲撃や戦闘があった地点がマッピングされている。ザポロジエからハリコフにかけて弧を描くように連なる赤い点の数は1月14日時点で65ケ所。ちょうどロシア軍の占領地との境界線に重なる。そこに残る住民の数はどの町も人口の1割から2割程度だ。「避難するための蓄えがない」「子供や高齢者は長距離の移動や慣れない土地で暮らすのが不安だ」という声を耳にする。

 氷点下20度にもなることがあるというウクライナで、冬を乗りきるため欠かせないのがまきストーブだ。マリウポリの支援団体は一つ50ドルで寄付を募り、1000個以上のストーブを無料で配布、設置してきた。ストーブはオーラさんが避難している地下室にもあり、最高気温が氷点下2度の今日も家族を守っている。

 「雪だるまを作って遊びたい」と話すオーラさんの夢が実現する日を待ちながら。<写真・文 尾崎孝史(写真家)>(すべてウクライナで撮影)

【ウクライナ侵攻】

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