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青嵐の旅人

天童荒太さんの初の新聞連載小説。幕末・明治の激動期を、中央ではなく地方から、市井の人々の視点で見つめる物語です。

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青嵐の旅人

/3 天童荒太 高杉千明・画

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 身なりは立派とは言えない。髪もぼさぼさで、武士ではあっても、たぶん下士だろう。大柄で、背中が広く、腰も張り、腕が太い。

 森の木々に斧(おの)を振るっているほうが、よほど似合っていそうな男が、裏道やへんろ道からも外れた、こんな茂みの奥で、腹を押さえてのたうっている。それこそ獣じみた、いかめしい面(つら)つきだろうと予想していた。

 だが、ヒスイの前には、薄く無精ひげが伸びてはいるが、品のある端正な顔がある。

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