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日本有数の花の産地、愛知県の渥美半島の施設園芸農家が、燃料高騰と物価高に苦しんでいる。JA愛知みなみ(同県田原市)は栽培に必要不可欠な電気料金が今後も上昇するとみている。同JAアルストロメリア部会の役員、片山弘行さん(45)は「『廃業』の二文字が頭をよぎる。国や自治体による支援を強化してもらわないと、農家が激減してしまう」と危惧する。
月に一般家庭3年分の電力消費
田原市和地町の河合和貞さん(57)のハウスでは、大人の背丈をはるかに超える高さに育ったアルストロメリアが、ボリュームのある白い花を咲かせていた。2021年10月から1年間のアルストロメリアの流通量(東京都中央卸売市場統計)は、愛知県が長野県に次いで2位。愛知県産は高い品質が評価されて価格はトップだ。
本来は夏季に開花する品種だが、渥美半島では6~10月、地中埋設した金属管に5~6度の冷水を流して球根を冷やし、冬季も咲かせて出荷する。その冷水を作る装置「チラー」は月に1万3000キロワット時という一般家庭の約3年分に当たる電力を消費する。茎が太い花を育てるためには、冬季の暖房も欠かせない。河合さんは言う。「40年近く栽培しているが、今が一番苦しい」
同JAが試算したアルストロメリアの10アール当たりの年間電気料金は、21年が約88万円だったが、22年は約37万円増の約125万円となった。
さらに重油価格、球根、出荷用段ボール箱、運賃などの資材費もことごとく上昇している。片山さんが部会員への調査から試算した10アール当たりの年間栽培経費は、17年は約451万円だったが、22年は約612万円に膨れ上がった。経営者夫婦と両親の計4人が働く農家の場合、17年に約26万円あった1人当たりの月収は、22年には約13万円に半減した。
部会は取引先に経費試算表を配り、農家の現状を知ってもらう努力を続けているが、価格アップにはなかなかつながらないという。
同JAによると、バラ農家の10アール当たりの22年の電気料金は、21年比約35万円増の約129万円、輪菊も同比約10万円増の約45万円と、ほかの花を栽培する農家にも燃料高は重くのしかかっている。
「継ごうとする若い人いなくなる」
片山さんの高校生の長男は、幼い頃から農作業を手伝ってくれており、「いずれは継ぐ」と言ってくれる。長男と一緒に全国へ花を届けることを想像するのは片山さんの喜びだが、最近、脳裏に「廃業」「栽培品目転換」という言葉が浮かぶようになったという。
「これまでも燃料高騰などが大変な時期はあり、品質向上や経費削減などで乗り切ってきた。でも今回は、自分たちの努力だけではどうしようもない」と話す片山さん。「このままでは農家の廃業が増え、継ごうとする若い人もいなくなってしまう。中小企業など多くの業界も経費高で苦しんでいる中なので大変言いづらいが、日本の農業がこれからも継続していけるように、国や自治体はさらに強力な支援策を考えてほしい」と悲痛な表情で訴えた。【荒川基従】
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