全国で相次ぐ強盗事件、特殊詐欺の手口と酷似 背景に組織関与か

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大塩衣与さんの遺体が見つかった住宅=東京都狛江市駒井町3で2023年1月20日午前8時24分、岩崎歩撮影 拡大
大塩衣与さんの遺体が見つかった住宅=東京都狛江市駒井町3で2023年1月20日午前8時24分、岩崎歩撮影

 東京都狛江市で大塩衣与さん(90)が殺害された強盗殺人事件は、全国で発生が相次ぐ強盗事件のメンバーらが何らかの形で関与した疑いが浮上している。これらの事件では、指示役が多額の現金がある住宅の情報などを入手し、SNS(ネット交流サービス)で「闇バイト」として募った実行役が事件を起こしたとみられている。特殊詐欺と手口が酷似しており、警察幹部は「特殊詐欺グループが手っ取り早く金が欲しくて事件を起こしている可能性がある」とみている。

報酬100万円の闇バイト

 「闇バイトに応募してやった」。昨年12月に東京都中野区の住宅で現金約3000万円が強奪された事件で逮捕された30代の男性容疑者は、警視庁の調べにそういう趣旨の供述をした。この男性を含む7人の実行役はいずれも闇バイトの募集などで集まったという。

 捜査関係者によると、昨年10月に東京都稲城市の住宅で現金約3500万円などが奪われた事件でも、実行役は闇バイトで応募したのがきっかけとみられる。

 この二つの事件に関わったメンバーは、山口県岩国市や広島市西区で発生した強盗事件にも関与していることが捜査関係者への取材で判明している。

 岩国市の事件で既に逮捕された一部のメンバーの公判は始まっている。

今年1月に関東地方で発生した強盗事件 拡大
今年1月に関東地方で発生した強盗事件

 冒頭陳述などによると、被告男性(26)は闇バイトに応募したところ、「報酬100万円のタタキ(強盗)の仕事」と説明を受けた。指示役の言うがままに、現場に赴き、そこで他のメンバーから被害者宅の写真を示され、「金庫が二つあり1億円が入っている」「金庫の番号が分からなかったらカッターで脅す」などと聞かされたという。

 指示役については氏名も含めて判明していない。

 実行役を闇バイトで集める手法は、特殊詐欺の手口と一致する。特殊詐欺でも、現金を受け取ったり引き出したりする実行役は闇バイトで集められているケースがほとんどだ。

 特殊詐欺グループの指示役には暴力団や、常習的に不法行為を続ける不良集団「半グレ」が関わっているとされるが、実態がつかみにくく、検挙が実行役にとどまることも少なくない。

 捜査幹部は一連の強盗事件について「背後に暴力団や半グレなどの組織が絡んでいる可能性はある」と話す。

 暴力団の関与が垣間見えるケースもある。

 昨年6月に茨城県古河市の住宅から現金約3000万円が強奪された事件で、茨城県警は3人の男性を逮捕した。うち1人は指定暴力団関係者との情報があり、県警が確認を進めている。東京都中野区の事件も、組織的犯行の可能性が強いとみて警視庁暴力団対策課が捜査に当たる。

特殊詐欺摘発強化で手荒に?

 強盗事件が多発している背景には、特殊詐欺の摘発強化もあるようだ。

 警察庁によると、特殊詐欺の被害額は2014年(約565億5000万円)をピークに21年(約282億円)まで7年連続で減少。22年は1~11月の暫定値で約316億円と既に前年を上回ったが、警察当局と金融機関が連携を強化するなどの被害防止対策に一定の効果が出ている。

 対策強化や手口の周知により、だまされる人の数は減りつつある。

 ある警察幹部は「特殊詐欺が手間になり、手荒な事件を起こしているのかもしれない」と危惧する。また、別の幹部は「同じ指示役の下で特殊詐欺をする実行役と、強盗をする実行役がいる可能性もある」と指摘する。

 19年ごろに、事前に電話で資産状況などを尋ねる「アポ電」(アポイントメント電話)による強盗事件が相次いだことを挙げ、「『アポ電強盗』の再来の気もする」と幹部は警戒を強める。

 特殊詐欺の手口に詳しい立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「犯罪集団が『コスパ』を重視した結果、特殊詐欺から強盗に手を染めるようになっているのではないか」と指摘。「特殊詐欺で電話をかけ続けても、被害に遭う人はごくわずか。それならば、財産情報を得たら強盗に入ってしまうのが手っ取り早いのだろう」と話した。【鈴木拓也、長屋美乃里、木原真希、福原英信】

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