一部で高まる賃上げ機運 中小企業に広がらない理由 春闘本格化
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主要企業の労使の代表者などが集まる経団連の労使フォーラムが24日、東京都内で開かれた。2023年春闘の労使交渉が本格化し、物価上昇率を大幅に上回る賃上げに踏み切る企業も出てきているが、果たしてどこまで広がるのか。
ホテル社員、上げ幅に驚き
「え、本当かな」。都内のビジネスホテル「クインテッサホテル東京銀座」で働く30代の女性社員は、社内の説明会で1月から2割以上も給料が上がることを知り、信じられない思いだった。実家の両親は「長く仕事を続けてきて良かったね」と喜んでくれた。支給は2月からで実感はまだない。10年近くこの業界に身を置くが大幅な賃上げは今回が初めて。やる気が湧いてきた。
同所など全国で18カ所のホテルを運営するコアグローバルマネジメント(東京)では、1月からの給与改定で社員らの月額最低給与を26万円に引き上げた。新入社員から若手・中堅社員は2~3割前後の賃上げにつながるといい、ホテルを開業した13年以降で初めての大幅な改定だ。人事制度などを担当する浅田悟取締役は「5年、10年先の優秀な人材を確保する上でも、このタイミングで賃金の底上げを図るべきだと判断した」という。
イメージ一新したい
ホテル業界の最低給与は20万円前後が相場とされる。新型コロナウイルスの感染拡大前から価格競争が激しく、賃金水準は低かった。コロナ禍で冷え込んだ需要が回復するにつれ、物価高騰と人手不足の波が押し寄せてきたため、「低い給料のイメージをなんとか一新したい」(浅田氏)という思いもあった。光熱費の高騰に加え、人件費も大幅に増えるが「社員の意欲が上がれば接客などの質も向上する。それが会社の成長にもつながる」と前向きに捉える。
22年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比で4・0%も上昇した。日銀は22年度全体で3・0%程度の上昇を見込む。景気を冷え込ませないため、政府は物価上昇率を上回る賃上げを経済界に求めている。労使フォーラムであいさつした経団連の十倉雅和会長は「物価上昇を特に重視した検討を行い、企業の社会的責務として賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持、強化に…
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