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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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ウクライナの子供たち、連行疑い多発 ロシア軍占領地で今何が?

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リュドミラ・コズルさん(右)と、ロシアの「サマーキャンプ」に留め置かれていた次女ベロニカさん=ウクライナ東部ハリコフで2023年1月22日午後4時42分、念佛明奈撮影 拡大
リュドミラ・コズルさん(右)と、ロシアの「サマーキャンプ」に留め置かれていた次女ベロニカさん=ウクライナ東部ハリコフで2023年1月22日午後4時42分、念佛明奈撮影

 ロシアが侵攻するウクライナで、露軍の占領地からウクライナ人の子供がロシア領に連行された疑いのある事案や、ロシアに行った子供が露領内で留め置かれるケースが多発し、国際的に非難の声が上がっている。露軍占領地の子供たちに何が起きているのか。

 「迎えに来てくれるの? いつ来られるの? お母さん、今どこにいるの?」

 東部ハリコフ州クピャンスク近郊の村に住むリュドミラ・コズルさん(48)は昨年8月、約3週間の予定で次女ベロニカさん(13)をロシア南部ゲレンジークで行われるサマーキャンプに送り出した。だが、当初のキャンプ終了期日を過ぎてもベロニカさんは帰国のめどが立たない。代わりにベロニカさんから迎えに来てほしいという声が電話などでコズルさんに届いた。「何度もそう言われるのが一番つらかった」というコズルさんは「子供を連れ戻すことができない。そう思うと恐ろしくてたまりませんでした」と振り返る。

 村はロシアとの国境から約40キロ。昨年2月24日の侵攻開始とともに露軍が一帯に侵入し、翌25日には露軍が制圧。9月9日にウクライナ軍が奪還するまで約半年間ロシアに占領された。

ハリコフ州クピャンスク 拡大
ハリコフ州クピャンスク

 占領下の5月ごろ、ロシアで行うサマーキャンプに無料で参加できるという情報が学校などを通じて広がり始めた。ロシアに送る不安はあったが、近所の子供たちの中には参加して無事に帰ってきた子もいたので安全だと思えた。周辺で続く砲撃の音などを嫌がったベロニカさんはキャンプに行きたがった。説明会にも行き、夫と話し合った末、行かせることに決めた。

 8月28日、地域の200~300人の子供が5台のバスで出発した。参加者によると、露領内に入るとバスの前後をロシア警察の車両が挟んで移動したという。

 しかし9月9日、ウクライナ軍は占領地域であるこの村を奪還、露軍は撤退した。ロシア側のキャンプ管理者に連絡すると、戦況を承知しているので10月10日までキャンプ期間を延長すると言われた。

 キャンプの運営側は参加した子供の親がキャンプまで直接迎えに来れば帰す姿勢を示した。しかし危険な前線を越えてロシアに向かうのは難しい。迂回(うかい)してポーランドなどを経由するしかないが、大金がかかる。最終的にコズルさんら地域の母親14人はNGOの支援を受け、12月に陸路でポーランドとベラルーシを通過しロシアに入国。コズルさんは南部アナパのキャンプに移動していたベロニカさんと再会し連れ戻すことができた。「キャンプに行かせたことをとても後悔しています。もうどこにも行かせません」。コズルさんは取材にそう涙を浮かべた。

 それでもコズルさんたちは運が良かった方かもしれない。コズルさんらと一緒にキャンプに行き、娘のダーシャさん(15)を取り戻したタイシア・ポジダエバさん(32)によると、そのキャンプにはまだ51人の子供が取り残されていた。一方で、侵攻後にウクライナからロシアに移住した親に対しては既に子供が引き渡されていた。

 ウクライナ政府の推計では、キャンプ参加者も含め、侵攻後にロシア側に「移送」された子供の数は1月23日段階で少なくとも1万4450人で、ウクライナ側に戻れたのは126人だけという。欧州連合(EU)は「ロシアは不法行為をやめ、子供たちを直ちに安全に帰国させなければならない」と批判する。【ハリコフ(ウクライナ東部)念佛明奈】

    ◇

 2月24日でロシアによるウクライナ侵攻開始から1年。「出口」が見えない戦争の実像に迫る。

【ウクライナ侵攻】

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