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青嵐の旅人

天童荒太さんの初の新聞連載小説。幕末・明治の激動期を、中央ではなく地方から、市井の人々の視点で見つめる物語です。

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青嵐の旅人

/5 天童荒太 高杉千明・画

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 ごくり、と男の喉が鳴った。

 水を飲んだことが伝わり、ヒスイはゆっくり唇を離した。男の熱が移っていた唇と、火照(ほて)っていた頰に、冷たい風が当たる。

 自分のしたことが急に恥ずかしくなった。

 そっと男を見ると、人心地(ひとごこち)ついた表情をしている。薬が効くにはまだ早い。薬を飲んだという安堵(あんど)感と、水で渇きが少し癒えたことで、痛みが一時的に去ったのかもしれない。その表情が、年下の少年のようにも見え、

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