- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
北海道のJR根室線富良野―新得間(81・7キロ)の路線維持を目指す新得町の住民団体「根室本線の災害復旧と存続を求める会」が、4年半ぶりに廃線阻止の署名活動を開始した。JR北海道が示す廃止・バス転換が既定路線化しつつあるなか、この区間が「空知地方の豪雪で、旭川―札幌間が不通になった際の代替ルートになり得る」という新たな利用価値も訴え、存続運動に拍車を掛ける。【鈴木斉】
存続を求める会は2018年8月、路線維持を要望する地元住民ら5034人の署名を国土交通省に提出した。署名活動はそれ以来で、富良野市の市民団体「富良野鉄道未来の会」、北見市の「石北沿線ふるさとネットワーク」と連携し、2月末まで実施する予定だ。
3団体が集めた署名は、3月にも鈴木直道知事に手渡す計画。富良野―新得間を含めた鉄道による「道東・道北の広域周遊観光ルート」の可能性の調査▽この区間の存続と災害復旧に向けた国との協議の開始▽「ザ・ロイヤルエクスプレス」など観光列車の道東・道北周遊運行の実現――を道に求める。
一方、存続を求める会は同区間について従来から主張する「道東と札幌を結ぶ基幹路線の石勝線が災害などで損傷した場合の迂回(うかい)路」という役割に加え、降雪期に旭川方面と新千歳空港など札幌方面を結ぶ代替ルートとして活用できるとして、路線維持の必要性の根拠に挙げることを決めた。
代替ルートは、岩見沢市など空知地方の豪雪の影響で、旭川から札幌に向かう鉄路が不通になった場合、根室線と石勝線を利用して「旭川―富良野―新得―南千歳―札幌」という形で迂回する案。存続を求める会の佐野周二事務局長は「今後も道内内陸部の降雪は増えるとされ、豪雪期のJR函館線の代替ルートの検討は重要だ」と語る。
この代替ルート案についても、鈴木知事に署名を出す際、要望書として提出する。存続を求める会は1月20日、新得町で緊急会合を開き、署名活動や新ルート案に基づく存続運動の方針を確認した。平良則代表は「一人でも多くの署名を知事に届け、改めて存続の意義を訴えたい」と話した。
根室線の東鹿越(南富良野町)―新得間は18年夏の豪雨災害で不通となった。復旧されないまま、JR北海道は18年11月、不通区間を含む富良野―新得間の廃止・バス転換の方針を発表。この区間の沿線首長らは22年1月、路線存続を断念してバス転換の協議開始にかじを切った。廃線の流れはでき上がりつつあるが、その後の協議は進んでいない。