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青嵐の旅人

天童荒太さんの初の新聞連載小説。幕末・明治の激動期を、中央ではなく地方から、市井の人々の視点で見つめる物語です。

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青嵐の旅人

/6 天童荒太 高杉千明・画

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 昨年の暮れ、江戸で北辰一刀流(ほくしんいっとうりゅう)を掲げて名高い千葉道場で、若くして塾頭となった土佐出身の剣術の名人が、伊予松山藩を訪れていた、という話を、ヒスイは耳にしていた。

 彼女が暮らす家には、四国を旅するおへんろや、藩を越えて行き来する商人や飛脚らを通じて、ちまたの情報がしぜんと集まる。

 加えて、ヒスイの祖母が、藩主の側近であり、藩校明教館(めいきょうかん)の教授である大原観山(おおはらかんざん)と幼なじみだった。観山は、ときおり家に遊びにきて、城内ではなかなか口にできない話まで、愚痴まじりに聞かせてくれることがあった。

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