特集

ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

特集一覧

「時代の転換点」戦車供与決断のドイツ 平和主義も、経済も

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
ドイツ製戦車「レオパルト2」=ドイツ・ハノーバー付近で2011年9月、AP
ドイツ製戦車「レオパルト2」=ドイツ・ハノーバー付近で2011年9月、AP

 ロシアがウクライナに侵攻を始めた昨年2月24日以降、欧州の安全保障政策は激変した。各国は侵攻を自らへの脅威とみなし、ウクライナへの軍事支援を加速した。象徴的なのはドイツだ。戸惑いながらも第二次大戦の反省に根ざす反戦・平和主義を転換し、米国に背中を押される形で、主力戦車の供与にも踏み切った。

政治の地殻変動、ためらうショルツ氏

 「何が正しく、何が間違っているのかは誰も教えてくれない。だからこそ我々は一歩一歩前進していくことが必要だ」。ドイツのショルツ首相は25日、連邦議会で演説し、ウクライナへのドイツ製戦車「レオパルト2」の供与を発表した。

 レオパルト2は、ウクライナの戦況に大きな影響を与える可能性がある。東・南部でロシア支配地域の奪還を目指すウクライナ軍にとって、露軍が築いたざんごうなどの防御を突破するには機動力と強力な火力を兼ね備えた戦車の投入が不可欠だ。

 英国が先に主力戦車「チャレンジャー2」の供与を発表したが、欧州で同戦車を保有しているのは英国のみ。これに対し、レオパルト2は欧州十数カ国が計2000両以上を保有。ポーランドなどの保有国もすでに提供する意向を表明しており、各国が融通すれば大規模な戦車部隊の編成も可能だ。春先にはロシアによる大規模攻勢が予想されている。訓練期間を踏まえると供与の可否を最終判断する「デッドライン」が間近に迫っていた。

 だが、ショルツ氏は、ぎりぎりまで決断をためらっていた。高い攻撃力を持つ兵器の供与でロシアとの対立が決定的になるのは回避したい――。そんな思惑とともに影響したのが自身の政治理念だ。

この記事は有料記事です。

残り2557文字(全文3230文字)

【ウクライナ侵攻】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

ニュース特集