くどうれいん・選　『せとうちたいこさん　デパートいきタイ』＝長野ヒデ子・作

　（童心社　1430円）

　「くどうさんは欲が多いねえ」と言われたことがある。わたしのつくる短歌には「○○したい」「○○になりたい」という欲望の歌が多いとのことだった。その人にはわたしのその欲深さがとても羨ましく好ましいのだという。みな何かしらの欲望と暮らしているだろうに、と思っていたが、確かにわたしは感動するとすぐに「これになりたい」と思ってしまう。おいしい炒飯（チャーハン）を食べれば、おいしい炒飯を作る人になりたい。立派な建築を見れば、この建築を作る仕事の人になってみたい。昔から、テレビでかっこいいアイドルが歌って踊るのを見てもキャーと言わず「この人になってみたい」と真剣に思ってしまう子供だった。

　『せとうちたいこさん　デパートいきタイ』を初めて読んだのは小学生の時、図書館でたまたま見つけた。帽子を被（かぶ）った赤い魚、へんなの、と思って手に取ったのだ。タイのたいこさんが「デパートに　いきターイ」と言い出して、大きな百貨店を隅から隅までたのしみ尽くす絵本だ。わたしは見開きいっぱいにいろんな登場人物が好き放題遊んでいる絵本が好きなので、当然この絵本にのめりこんだ。おめかしをして尾びれにハイヒ…