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第95回センバツ高校野球

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春に挑む・’23東海大菅生センバツへ

/上 「史上最低」から頂点へ 気持ち引き締め、チーム一丸 /東京

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秋季都高校野球大会を制し、マウンドに集まって喜ぶ東海大菅生の選手たち=神宮球場で、2022年11月、北山夏帆撮影 拡大
秋季都高校野球大会を制し、マウンドに集まって喜ぶ東海大菅生の選手たち=神宮球場で、2022年11月、北山夏帆撮影

 肌寒い風が吹く神宮球場に緊張感が漂っていた。昨年11月13日、秋季都高校野球大会の決勝。九回表、東海大菅生は夏の東東京大会を制した二松学舎大付に6点をリードしていたが、連打と四球で1死満塁と大きなピンチを迎えていた。

 マウンドの日当(ひなた)直喜(2年)は目を閉じて自分に言い聞かせた。「最後は気持ちだぞ」。次の打者に投げ込んだ135球目。内野ゴロになった打球を二塁手の大舛凌央(りお)(同)がつかみ、併殺で優勝を決めた。選手たちはマウンドに集まり、人さし指を高々と突き上げた。

 少し遅れて歓喜の輪に加わった主将の渡部奏楽(そら)(同)にとっても、待望の勝利だった。「史上最低」――。そんな評価から始まった新チームが一つにまとまり、つかみとったものだったからだ。

 その3カ月半前、夏の西東京大会決勝で日大三に逆転負けし、新チームが始動した。引退した3年生は好選手が多く、「史上最高」と呼ばれた世代。新チームのメンバーはなかなか試合に出場できず、西東京大会の決勝の舞台に立ったのも途中登板した日当だけだった。個人練習に集中してチームメートへの心配りが足りない選手もおり、まとまりに欠ける面もあった。コーチ陣はそれを見抜き、「史上最低」と呼んでいた。

 西東京大会で敗れた後、寮に戻って開かれた新チーム発足のミーティングで渡部が主将に指名された。当時は2軍にあたるBチームにいたが、人をまとめるリーダーシップを買われた。「自分たちには気持ちしかない。勝利への執念だけは負けずにやっていこう」とチームメートに呼び掛けた。言葉の裏には「史上最低」の評価を覆したいという思いがあった。

 他の部員も同じ気持ちだった。新井瑛喜(ひでき)(同)は「悔しかった。行動で絶対に見返してやると思っていた」。練習試合で実力を出し切れないことがあれば、試合後のミーティングで一つ一つのプレーを納得いくまで話し合った。自己中心的な行動を直すため、気になることがあれば渡部らに相談するよう部員間で共有した。

 こうした中で、選手の心を一つにした出来事があった。秋季都大会の期間中、主力選手がグラウンド整備や道具の片付けをBチーム任せにしたことがあった。それを見た渡部が主力選手を集めて言った。「仲間に応援してもらえない選手ではだめだ。全員でもう一回気を引き締めよう」。Bチームが長かった渡部ゆえの気づきだった。

 迎えた秋季都大会の決勝。スタンドではグラウンドの選手を懸命に応援する野球部員たちの姿があった。同じ目標に一丸となったチームは、「最低」から秋の東京の頂点に駆け上がった。決勝戦の後、記者会見を待っていた渡部はチーム関係者に話しかけられた。「良いチームになったな」。自分たちの努力が実ったのだと、うれしさがこみ上げた。【加藤昌平】

     ◇

 3月18日に甲子園で開幕する第95回記念選抜高校野球大会に、都内から東海大菅生と二松学舎大付が出場する。2校が春の切符を手にするまでの道のりを振り返る。

〔多摩版〕

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