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エースの目は赤くなっていた。昨年7月31日、夏の甲子園出場を懸けた西東京大会の決勝で東海大菅生が日大三に敗れた後、野球部の寮に帰るバスの車内でのことだ。当時、背番号「1」を背負っていた鈴木泰成さん(3年)が隣に座った日当(ひなた)直喜(2年)に声を掛けた。「お前らの代では負けるなよ」
この年のチームは秋季、春季、西東京大会と日大三に三度敗れていた。西東京大会の決勝では2点を先行したが、中盤以降に集中打で逆転を許した。日当は4点を負う八回から2イニングを投げたが、流れを変えられなかった。東京の頂点をつかむ思いは先輩から後輩に託された。
新チームで日当とバッテリーを組んだのは副主将の北島蒼大(そうた)(同)だった。それまで外野手で捕手の経験はわずかだったが、打撃力を見込まれてコンバートされた。守備の要であり、投手をリードする捕手の役割は重い。当初は練習試合でエラーを連発し、投球を後逸して進塁を許すなどミスも多かった。
10月9日にあった秋季都大会の本大会1回戦、日大豊山との試合を終えた後の夜、日当は寮の部屋に北島を呼び出した。この日、7―5で勝利したものの、リードがうまく行かずに失点を許していた。日当は一冊の本を差し出した。「次の一球は?」というタイトルの配球問題集だった。「配球を勉強しよう」。その日から連夜、投球の組み立てやリードの勉強会が始まった。
北島は練習後に一人グラウンドに残り、ワンバウンドの球を止める練習も繰り返した。「チームに迷惑をかけたくない」という一心だった。
接戦を制しながら秋季都大会を勝ち抜き、準決勝の相手は日大三に決まった。試合が目前に迫った時、練習後のミーティングで日当は全員で髪を五厘刈りにすることを提案した。2年前にセンバツ出場を決めた先輩が、同じく秋季都大会の準決勝の前に頭を丸めて結束し、勝利した験を担いだ。
試合は両チームの先発が好投し、息詰まる投手戦になった。同点の八回に2死一、二塁で日当が左前打を放ち、二塁にいた原田悠太郞(1年)が「気持ちで本塁に突っ込んだ」という好走で本塁に生還。決勝点をもぎ取った。日当は2失点で完投し、北島も五回に二塁走者のリードが大きいのを見逃さずに送球してアウトにするなど勝利に貢献した。
その夜、日当と北島は寮のミーティングルームにいた。日課となっている夜の勉強会で、決勝でぶつかる二松学舎大付の準決勝の映像を見ながら配球の研究に没頭した。激戦を終えて疲れているはずだが、気にならなかった。「自分たちが抑えて甲子園に行く」。バッテリーは考えながら、一歩ずつ成長していった。【加藤昌平】
〔多摩版〕
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