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「あちゃ、おまん……おなごじゃったんか」
龍馬が頭をかき、「すまんことを言うた」
「いえ、よく間違えられますから」
ヒスイは恥ずかしくて、つい顔を伏せた。
「まあ、見た目からでは、仕方がないかの」
俊平も苦笑いして「明王院は伊予の修験道場で、古くから道後の湯を管理している話は有名じゃ。その道後で、へんろ宿と言えば、さぎのやが、歴史もあり、国ざかいの土佐の村々にも知られちょる。龍馬が剣術詮議(せんぎ)の名目で、讃州(さんしゅう)から長州へ向かう先日の旅のおり……伊予松山藩に入るなら、さぎのやに泊まり、道後の湯につかってみいと教えたろう」
「ああ、そのつもりじゃったが、向き合う内海が穏やかなせいか、人がみな良く、のんびりしちゅう。親藩でもあり、いまのわしには居心地が悪かった。ゆっくり湯につかる気にもなれず、そそくさと船に乗ったきに」
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