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第95回センバツ高校野球

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春に挑む・’23東海大菅生センバツへ

/下 全国の壁破る肉体に 強化合宿 昼と夜、毎食1人米1キロ /東京

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選手たちのシートノック練習を見る宮本慎也さん(右)=あきる野市の東海大菅生野球グラウンドで2023年1月22日午後1時53分、加藤昌平撮影 拡大
選手たちのシートノック練習を見る宮本慎也さん(右)=あきる野市の東海大菅生野球グラウンドで2023年1月22日午後1時53分、加藤昌平撮影

 東海大菅生のグラウンドはあきる野市菅生地区の山あいにあり、真冬には氷点下まで気温が下がる。寒風が吹く1月下旬、そこには選手たちの熱気が充満していた。野手が実際の守備位置について行う、チーム伝統の実践形式のシートノック。「ゲッツー、ゲッツー」「いいね、ランナー」。好プレーにチームメートの元気な声が響いた。

 内野手のすぐ後ろで、昨夏から新チームの臨時コーチを務めている元プロ野球ヤクルトの宮本慎也さん(52)が厳しい視線を送っていた。現役時代は内野手としてゴールデングラブ賞を10回獲得した守備の名手で、2019年に高校生への指導に必要な学生野球資格を回復。長男の宮本恭佑(1年)が入部したこともあり、チームから請われて週に数回、打撃や守備を教えている。

 遊撃手の門間丈(2年)は、打球に突っ込んで捕球する癖があり、焦って失策につながる可能性があったが、宮本さんの助言を受けて後方で構える守り方に変えた。「守備もバッターによって変えるようになり、守備範囲が広がった」と手応えを感じている。打撃は宮本さんが基礎的な理論を教え、選手ごとにフォームを修正する方法で向上させている。

 チームは秋季都大会で優勝した後、全国の壁にぶつかった。全国の地区大会優勝チームが集まった明治神宮大会。初戦で甲子園に春夏通算で48回出場した広陵(広島)と対戦し、2―6で敗れた。打線の主軸を担った新井瑛喜(ひでき)(同)は「長打力や投手の球の強さを実感した」と振り返る。

 差が歴然としていたのが、両チームの体格だった。体の線が細い選手も多い自分たちに比べ、相手はがっちりした選手が多かった。宮本さんも「全国優勝したいなら、大阪桐蔭(大阪)や広陵よりも大きい体を作っていかないと」と指摘する。体を大きくすることがテーマの一つになった。

 昨年12月下旬から正月休みを挟んで1月初旬まで実施した冬の強化合宿では、選手たちの肉体作りに重点が置かれた。昼と夜の食事では毎回1人あたり1キロの米を食べ、一度の食事が苦手な選手は夜食などで補った。体が疲れている中での食事はきつかったが、選手はみな「甲子園で活躍するため」と食べきった。

 宮本さんの指導や食事トレーニングを重ね、選手たちは少しずつたくましくなっていった。酒井駿輔(同)は強化合宿の前と比べて体重が9キロ増加。フリー打撃ではフェンス手前まで飛ぶのがやっとだった打球も、合宿後にはフェンスを越えるまでになり、「スイングの質が変わってきたように感じる」と話す。

 1月26日、部員に暴力を振るったとして、長年チームを指導していた前監督(56)が解任され、新たに上田崇監督(29)が就任した。選手たちは衝撃を受けたが、視線は既にセンバツに向いている。「狙うは日本一。目の前の一戦一戦を全員で勝ちに行く」と渡部奏楽(そら)主将(2年)。明るい声が響く山あいのグラウンドで、選手たちは全国のライバルとの対戦を心待ちに練習を重ねている。【加藤昌平】

〔多摩版〕

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