特集

第95回センバツ高校野球

第95回選抜高校野球大会の特集サイトです。

特集一覧

夢への軌跡・23年センバツ

北陸 我慢覚え勝利知る 「北陸高の時代を」常に挑戦者精神 /福井

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
秋季北信越大会の準決勝の福井商戦で得点に喜ぶ北陸の選手たち=ハードオフエコスタジアム新潟で2022年10月22日、久保玲撮影 拡大
秋季北信越大会の準決勝の福井商戦で得点に喜ぶ北陸の選手たち=ハードオフエコスタジアム新潟で2022年10月22日、久保玲撮影

 34年ぶり2回目のセンバツ出場を決めた北陸。県内屈指の強豪校・敦賀気比でコーチを務め、2019年から指導する林孝臣監督(40)に率いられ、春切符をつかんだ。34年ぶりの秋季北信越大会優勝、初出場の明治神宮大会で4強進出という昨年の快進撃の原点となったのは、秋の県大会での手痛い敗戦だった。

 「自分たちは強いと勘違いしていた」。笹井多輝(たき)主将(2年)はそう振り返る。昨夏の福井大会は決勝で敦賀気比に敗れ、あと一歩で甲子園を逃した。悔しさを胸に始動した新チームは、185センチの長身から投げ下ろす130キロ台後半の直球と変化球が持ち味のエース・友広陸投手(2年)と、1年からバッテリーを組み長打力もある平田海智捕手(同)が柱となり、練習試合では負けなし。秋の県大会も「臆せず向かっていこう」(林監督)と、積極的にバットを振るなど全力プレーで順調に勝ち進んだ。

 ところが、準決勝の福井商戦で七回コールド負けを喫する。先頭打者に三塁打を打たれた友広投手はリズムが狂い、初回に3失点。その後も立ち直れず、打線も不調に終わった。初の敗戦に落ち込むナイン。その日のミーティングで、笹井主将は「3位でも北信越(大会)に出られれば、甲子園に行ける可能性がある。絶対に北信越に出よう」と鼓舞した。

 翌日の3位決定戦で、友広投手は初回に1失点、さらに三回には本塁打を許すなど立ち上がりは苦労したが、その後は立ち直り、計10三振を奪う修正力を見せた。打線も上位から下位まで安打を放ち、逆転勝ちした。林監督は「良くない時にどれだけ我慢できるか。前日の福井商戦ではそれができなかった。選手たちは自分たちが負ける時のパターンを知り、我慢のしどころがわかった」と話す。

 勢いに乗ったナインは北信越大会でも積極的な攻めで勝ち上がり、準決勝では福井商にリベンジを果たした。そして敦賀気比との決勝前日。林監督は「負けても失うものはない。チャレンジャー精神でやろう」、笹井主将は「勝って北陸の時代を作ろう」と盛り上げた。四球の出塁から犠打などで得点につなげるのが巧みな敦賀気比への対策として、監督は投手陣に「ストライクゾーンにバンバン投げていい」と指示。1失点に抑え、タイブレークを制した。林監督の就任後、敦賀気比からの初白星だった。

 林監督は就任当初の野球部の印象を「勝つ事に消極的だった」と振り返る。休日、午前9時からの練習で選手たちが集合するのは開始約10分前。敦賀気比では、30分前には全員がそろっていた。「試合に勝つにはミスを減らさないといけないが、余裕がない人は慌ててミスをする。準備が大切だと伝えた」。ノックでもただゴロを捕るだけではなく、ランナーを置くなど、より実戦に結びつく練習を増やした。

筋力アップを目指し懸垂に励む選手と指導する林孝臣監督(左)=福井市文京1の北陸高校で2022年12月22日、国本ようこ撮影 拡大
筋力アップを目指し懸垂に励む選手と指導する林孝臣監督(左)=福井市文京1の北陸高校で2022年12月22日、国本ようこ撮影

 勝ちにこだわりがないチームから、全力で勝ちに行くチームへ。一歩ずつ前に進んできた北陸は、さらなる進化を目指す。課題は打撃力と体作りだ。バットの振り込みは一日約1000本。漫然と振るのではなく、一本一本を丁寧に振る。下半身や背中の筋肉の強化をメインにトレーニングにも励む。明治神宮大会4強という成績にもおごらず、「自分たちは常に挑戦者だ」と言う林監督。「個々の能力は高くないが、それを自覚しカバーし合うチームワークと粘り強さがある。まずは1勝を目指す」。甲子園でも全力で勝利をつかみに行く。【国本ようこ】

あわせて読みたい

マイページでフォローする

最新写真

ニュース特集