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政府はマイナンバーの用途を拡大する。新型コロナウイルス禍で国民への支援策が滞った反省を踏まえ、暮らしを守る体制を整えるという。
用途を税、社会保障、災害対策に限定し、対象の業務を細かく定めている現行法を見直す。3分野以外にも、国家資格の更新や自動車登録などの手続きに使えるようにする方針だ。
さらに、規定に準じた業務なら法改正なしで追加できるような仕組みに改める。
現行制度のままでは、地方自治体がマイナンバーを使って独自の住民支援策を講じようとしても、法改正に2年程度かかる場合がある。柔軟に見直すことができれば行政サービスの改善につながる。
ただ、法律で用途を厳格に定めているのは、個人情報の流出やプライバシー侵害への不安に配慮したためだ。国民の懸念や疑問を置き去りにしたまま進めるべきではない。
利便性をうたうばかりでは、番号制度に対する国民の理解を得ることはできない。丁寧に説明し、国会で議論を尽くすことが求められる。
法改正のプロセスを経ずに対象業務を増やすのなら、個人情報保護委員会との連携を強化し、情報漏れなどのリスクを見極めることが前提となる。運用状況を国会に定期的に報告し、チェックを受ける仕組みも欠かせない。
政府は、児童手当や年金の振込先として使われている預貯金口座をマイナンバーにひも付けする制度も導入する方針だ。
通知を受けた本人が一定期間内に拒否しなければ、公金受取口座に登録する仕組みを想定している。住民が通知を見落とし、意思表示ができないまま、ひも付けされることも起こりうる。
口座情報を活用すれば、災害時などの支援を迅速に実施できるという利点はある。一方で、行政が個人情報を安易に使っていると受け止められれば、番号制度の基盤が揺らぐ。
政府の情報管理やデータ活用に対する信頼感を高めることが必要だ。個人情報保護委員会の機能強化は緒に就いたばかりである。国民の視点に立った取り組みを徹底してもらいたい。