「物価の優等生」バナナの不都合な真実 生産者の窮状が問うもの

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バナナは常にフルーツ売り場の主役だ。安売りの目玉になることも多い=東京都内で2021年1月31日、赤間清広撮影
バナナは常にフルーツ売り場の主役だ。安売りの目玉になることも多い=東京都内で2021年1月31日、赤間清広撮影

 日本人の国民食と言ってもいいバナナ。常に価格が安定し「物価の優等生」とも呼ばれている。しかし、日本の輸入量の8割近くを占めるフィリピンでは、バナナ農家の困窮が問題になっているという。現地で一体、何が起きているのか。

不平等契約を強いられる生産者

 「日本でバナナは一年中、スーパーにあって、しかも安くて当たり前。だが、それを支えるため、生産者は過酷な労働環境を強いられている」。こう語るのは、フィリピンのバナナ生産者を支援するNPO法人APLA(アプラ)の野川未央事務局長だ。

 国内ではアプラや、アジア太平洋資料センター(PARC)といった支援団体が中心となり2018年から、生産者の労働環境などに配慮した持続可能な農法で作られたバナナの普及を目指す「エシカルバナナ・キャンペーン」を展開してきた。だが「現地生産者の苦境はほとんど変わっていないのが実情」(野川さん)という。

 バナナ農家を苦しめる原因はどこにあるのか。アプラを通じて現地の生産者と接触した。

 匿名を条件にオンラインで取材に応じてくれたのは、フィリピン南部ミンダナオ島の「ダバオ・デ・オロ」地区でバナナ農家を営む50~60代の男性5人。バナナ販売大手、スミフル・フィリピンと契約を結び、日本や韓国、中東向けにバナナを生産してきた。5人はその契約内容が「スミフル側にあまりに有利な、不平等な内容になっている」と訴える。

 実際に英語で書かれた契約書の一つを見せてもらった。…

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