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つかみどころのないキャラクターや文言をあしらったイラストを数多く描き、無料通信アプリ「LINE(ライン)」のスタンプとして販売している。
茨城県ひたちなか市の田澤誠司さん(79)は「デザインは思いつくままで深い意味はない。だから無限の可能性がある」と話す。若者から広がったコミュニケーションツールのイラスト製作を自由に楽しんでいる。
スタンプは、ラインでやり取りする相手に文章の代わりに気持ちを伝える時に使う。伝えたい内容を端的に示すデザインが一般的だ。
でも、田澤さんのスタンプはいつ使えばいいのかと戸惑う作品も少なくない。なぜなのか。
始まりは暇つぶしだった。大手電機メーカーの元社員で、70歳で退職すると手持ち無沙汰に。パソコンの表計算ソフト「エクセル」の図形作成機能を駆使して家族や有名人の似顔絵などを描くようになった。
エクセルの図形作成機能は、主にビジネス向けの書類作りに使われる。三角形や円などの図形を組み合わせたり、曲線の曲がり具合を調整したりすることができる。
田澤さんがこの機能を駆使して描くイラストは、カラフルさも相まって独特な趣がある。
孫には「イラストをスタンプにしてみたら」と勧められた。当時はスマートフォンもラインも使っていなかった。それでも「何もしないより、やってみる方が楽しい」と挑戦した。
かつては自社の製品を納める工事現場に立ち、機械の取り扱いを書類に記す際に自作のイラストを添えたことがある。まずはその延長で「工事現場の安全促進」シリーズと題して数々の作品をデザインした。
脚立の上で作業をする人がふらつく「ヤバイ~落ちる」、作業中に倒れて助けを求める「酸欠だ換気いそげ」などを描いた。
「団塊の世代」シリーズも手がけた。戦後のベビーブームに生まれた人たちが抱いたさまざまな生活の実感を「まずいよ脱脂粉乳」「クーラー最高よ」などのフレーズとともに描いた。
数々のスタンプは、家族から「かわいくない」「売れるわけない」と酷評された。
ところが、…
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