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第72期王将戦

第72期ALSOK杯王将戦の特集ぺージです。記事、動画、棋譜、写真特集などで歴史的対決の様子をお伝えします。

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AIの影もかすむ棋士の姿 作家・芦沢央さんが見た王将戦

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第72期王将戦第3局を観戦する芦沢央さん(奥)=金沢市の金沢東急ホテルで2023年1月28日午後1時半、加古信志撮影
第72期王将戦第3局を観戦する芦沢央さん(奥)=金沢市の金沢東急ホテルで2023年1月28日午後1時半、加古信志撮影

 藤井聡太王将(20)と羽生善治九段(52)の“新旧王者の対決”が注目されている第72期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催)。1月28、29日、金沢市であった第3局を、将棋を題材にした作品もある作家の芦沢央さんに取材・寄稿してもらった。歴史的なタイトル戦は、将棋に魅せられた作家の目にどう映ったのか。

対局者にしか見えない風景

 1日目の昼食休憩後、手番だった藤井聡太王将は、前傾姿勢で盤を見下ろしていた。

 生身の人間では背負いきれないような重圧を背負っているとは思えないほど静かな表情で、ほとんど動かない。けれど対局室は莫大(ばくだい)な思考が蠢(うごめ)き続ける気配に満ち、その激しい存在感と現実の静謐(せいひつ)さのずれに、こちらの五感まで狂いそうになる。

 私は、窓から入り込む光が浮かび上がらせる駒の影を見つめながら、どうしてこんなにも恐ろしい道を進めるのだろう、と身を竦(すく)ませていた。運が割り込む余地がない将棋では、すべての手の責任が自分に跳ね返ってくる。身一つで真っ暗な海に深く潜り、正しいと信じる道以外の道は断たなければならない。自分自身に裏切られる可能性をのみ込まなければ、前に進めない。

 1勝1敗のタイで迎えた第3局は、…

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【第72期王将戦】

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