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「多様性を認め合う社会を目指す」との政権の姿勢は、口先だけだったと言われても仕方がない。
荒井勝喜首相秘書官が記者団の取材に対し、同性婚を巡って「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのも、ちょっと嫌だ」と発言した。
さらに「認めたら、国を捨てる人が出てくる」「秘書官室もみんな反対する」とも述べた。
許されない差別発言だ。
人によって性的指向はさまざまであり、尊重されなければならない。同性カップルも家族になる権利を持っている。
にもかかわらず、社会に根強く残る偏見に苦しんでいる。そうした人たちを傷つけるものであり、人権感覚の欠如が甚だしい。
荒井氏は直後に「やや誤解を与えるような表現をした」と撤回し謝罪したが、それで済む問題ではない。岸田文雄首相が更迭したのは当然である。
ただ、そもそもの発端は、首相の国会答弁だ。
先週の衆院予算委員会で同性婚の法制化について問われ、「極めて慎重に検討すべき課題だ」と従来の見解を繰り返した上で、「社会が変わってしまう」と述べた。
国民の不安感をあおるような発言である。当事者への配慮も欠いている。
背景には、保守派を中心とした自民党内の根強い反対論がある。LGBTQなど性的少数者に対する国民の理解を深める法案も、たなざらしになっている。
人々の意識は変化している。各種世論調査では容認派が反対派を上回るケースが目立ち、若い世代ほど、その傾向は顕著だ。
司法の場でも、同性婚を認めない現行制度は憲法に違反しているとの判決が出ている。
ニュージーランドが10年前、同性婚を法制化した際、喝采を浴びた議会演説がある。法案を支持する議員が「愛し合う2人の結婚を認めるだけだ。世界は、そのままです」と呼びかけた。
日本は今年、主要7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国だ。他の6カ国は同性婚を認めたり準じた制度を設けたりしている。
多様性を掲げるなら、日本も法制化に乗り出すべきだ。あらゆる人の権利が尊重される社会にしなければならない。